
平田剛士(フリーランス記者)
アイヌ施策推進法第10条には、「アイヌにおいて継承されてきた儀式の実施その他のアイヌ文化の振興等に利用するための林産物を国有林野において採取する事業に関する事項を記載することができる」とあります。具体的には、「認定アイヌ施策推進地域計画」を進める自治体に、「国有林野における共用林野の設定」(同法16条)を特別に認める仕組みです。2025年4月現在の認定計画(計36)のうち、この「特別の措置」の利用を盛り込んだものは、北海道釧路市・平取町・新ひだか町・白老町・札幌市・千歳市の6つです。それぞれ自治体首長と北海道森林管理局森林管理署長との間で「アイヌ共用林野設定契約」が締結され、契約書には、対象エリアの位置と面積、契約期間、「採取することができる林産物の種類、数抵及び採取方法」などが細かく記載されています。契約書にはまた「供用者名簿」が添付され、未掲載の人は「共用」が許されません。いずれの契約にも、「使用料免除」とあります。
アイヌ共用林の面積
6つの自治体のアイヌ共用林の面積は、合わせて18,868.43ヘクタールです。北海道森林管理局が管理する国有林面積3,067,124ヘクタールと比較すると、アイヌ共用林の占める割合は0.6%あまりです。
契約自治体 | 契約面積(ha) | 北海道内の国有林面積に占める割合 | アイヌ共用林契約書(北海道森林管理局開示) |
---|---|---|---|
平取町 | 7,306.37 | 0.24% | 日高北部森林管理署長・平取町長「アイヌ共用林野設定契約書」2024年7月1日づけ |
白老町 | 3,514.17 | 0.11% | 胆振東部森林管理署長・白老町長「アイヌ共用林野設定契約書」2025年2月25日づけ |
釧路市 | 3,028.15 | 0.10% | 根釧西部森林管理署長・釧路市長「アイヌ共用林野設定契約書」2022年12月12日づけ |
千歳市 | 2,535.12 | 0.08% | 石狩森林管理署長・千歳市長「アイヌ共用林野設定契約書」2022年3月29日づけ |
新ひだか町 | 1,586.65 | 0.05% | 日高南部森林管理署長・新ひだか町長「アイヌ共用林野設定契約書」2020年7月9日づけ |
札幌市 | 897.97 | 0.03% | 石狩森林管理署長・札幌市長「アイヌ共用林野設定契約書」2024年3月28日づけ |
合計 | 18,868.43 | 0.62% |
北海道森林管理局が管理する国有林面積 3,067,124ha
https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/statistics/kyoku/arc/attach/pdf/R6_jigyoutoukei-56.pdf
「樹木伐採不可」エリアの指定
平取町と札幌市のアイヌ共用林には「樹木伐採不可」エリアが設定され、全体に占める割合はそれぞれ34.3%、31.4%です。
契約自治体 | 契約面積(ha) | うち「樹木伐採不可」エリア面積(ha) | 割合(%) |
---|---|---|---|
平取町 | 7,306.37 | 2,508.43 | 34.3% |
札幌市 | 897.97 | 281.76 | 31.4% |
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