12/1(日)ドキュメンタリー上映会&トーク「カムイチェプ サケ漁と先住権」

現代語訳・北海道地所規則(1872年)

明治5年9月-日  開拓使達 https://dl.ndl.go.jp/pid/995331/1/34

原文現代語訳(仮)
第1条永住ノ者居屋漁舎倉庫敷地或ハ社寺及ヒ墾成セシ従来ノ拝借地等自今更ニ経界畝数改正永ク私有地ニ定メ地券相渡シ今申年ヨリ七年間除租ノ事永住者(北海道居住者のうち、北海道に本籍のある人)の家が建っている土地、漁業のための建物・倉庫の建っている土地、寺社の建っている土地、開墾ずみの農地など、じゅうらい「拝借地」とされてきた土地について、改めて境界線や面積を確認したうえ、永久的な「私有地」として地券を渡す。また、今年から7年間は免税とする。
第2条寄留人拝借地タリドモ既ニ開墾営構セシ分ハ是又其者ノ私有地ニ定メ地券相渡除租前条ニ準スヘシ寄留者(北海道居住者のうち、北海道に本籍のない人)の「拝借地」のうち、すでに開墾して営農している土地は、その人の「私有地」と認めて地券を渡す。また、第1条と同じように免税期間を設ける。
第3条漁浜昆布場モ更ニ経界相正シ永住人ハ私有地寄留人ハ当分依旧可為拝借地但私有地拝借地共本年ヨリ五年間除租タルヘシ尤拝借中売却ハ勿論貸与致候者ハ上地可申付事漁業が行なわれている海浜や昆布(干)場についても、あらためて境界線を確定したうえ、永住者に対しては「私有地」として地券を発行し、また寄留者に対しては、当面は旧来と同じ「拝借地」とする。ただし漁業海浜・昆布場の土地の免税期間は、私有地・拝借地のどちらに対しても今年からの5年間とする。寄留者は「拝借地」を第三者に売却することはもちろん、貸すことも許されず、違反した場合は土地の(官への)返納を命じられる。
第4条従来拝借地ヲ他人ヘ貸渡借主既ニ家倉営構セシ者ハ寄留人ト雖借主可為私有地事すでに「拝借地」を第三者に貸与し、その借り手が居宅や倉庫を建てて現に暮らしを営んでいる場合は、借り手が「寄留者」であったとしても、その土地を借り手の「私有地」とする。
第5条拝借地既ニ家倉営構其後他人ヘ貸渡者ハ貸主前条ニ準スル事「拝借地」のうち、居宅や倉庫を建てた後で(土地・家屋をいっしょに)第三者に貸し渡している人(貸し手)の土地は、前条と同じように(永住者・寄留者の区別なく)貸し手の「私有地」とする。
第6条永住寄留人共従来ノ拝借地々券ヲ渡私有地ニ下タルハ地代上納ニ不及事永住者・寄留者のいずれも、これまで「拝借地」だった土地の地券発行を受けて「私有地」に変更した後は、土地代金を納める必要はなくなる。
第7条山林川沢従来土人等漁猟伐木仕来シ地ト雖更ニ区分相立持主或ハ村請ニ改メ是又地券ヲ渡爾後十五年間除租地代ハ上条ニ準スヘシ尤深山幽谷人跡隔絶ノ地ハ姑ク此限ニ非サル事これまでアイヌが漁猟や伐木を仕切ってきた山林・川・沢などの土地も、新たに区分けして個人所有者を決めるか、あるいは「村請け」にして、同じように(「私有地」として)地券を発行し、15年間免税とする。「私有地」とした後は地代納付は不要である。ただし、山の奥深く、地勢のはっきりしない谷、人跡未踏のエリアについては、土地の所有者確定作業はしばらく留保する。
第8条原野山林等一切ノ土地官属及従前拝借ノ分目下私有タラシムル地ヲ除ノ外都テ売下地券ヲ渡永ク私有地ニ申付ル事原野山林などの一切の土地、官属および従前の拝借の分(もっか私有たらしむる地を除く)のほか、すべてを売却して地券を渡し、永久に私有地とする。
(北海道土地売貸規則第1条と同じ)
第9条売下ノ地一人十万坪ヲ以限トシ下手後十ケ年除租タルヘシ尤已ニ私有シタル地ヲ相対売買スル者ハ其坪数制限ナカルヘキ事売却する土地の面積は一人あたり10万坪(33ha)を上限とする。売り下げ後の10年間は税金を免除する。やむをえず私有地を売買する場合は、土地面積の制限は設けない。
(北海道土地売貸規則第2条と同じ)
第10条売下ノ地価上等千坪一円五十銭中等同一円下等同五十銭千坪以下其割合タルヘシ且其地代即納タルヘシト雖家産中人以下或ハ罹災窮乏ノ者ハ三年乃至五年賦上納申付ル儀モ可有之事売却する土地価格は、上等(ハイクラス)で1.5円/1000坪(33a)、中等(ミドルクラス)で1円/1000坪(33a)、下等(ロークラス)で0.5円/1000坪(33a)とし、面積1000坪(33a)未満の土地の場合も同様の基準で算出すること。土地代金は即日支払いを原則とするが、資産が中級(ミドルクラス)以下の人や、災害のために当座のお金がない人は、3~5年の分割払いを願い出ることもできる。
(北海道土地売貸規則第3条と同じ)
第11条既ニ私有スルノ土地ハ牧畜開墾等一切ノ産業ハ勿論他人ヘ売却スルモ其地主ノ自由タルヘシ尤右等下手スル節ハ水利運便等ニ注意シ其方法及期限等詳細ニ可申出事従来からの土地所有者は、牧畜・農地造成など、どんな産業向けにも自分の土地を自由に売却できる。ほかの個人に売却するのも自由である。ただし、そのように土地を売買する際には、土地所有者はその土地での水利用や交通の現況、それらインフラの利用期限・利用契約などについて、相手に詳しく説明すること。
(北海道土地売貸規則第4条と同じ)
第12条人民私有ニ属スル土地ト雖外国人ヘ売渡或ハ之ヲ引当トシテ金子ヲ借受ル等可為禁止事(官有地ではなく)私有地とはいっても、その土地を外国人に売却したり、その土地を担保に外国人からお金を借り入れたりすることは禁じる。
(北海道土地売貸規則第5条と同じ)
第13条土地買下ノ後開墾其他共上等地ハ十二ケ月中等地ハ十五ケ月下等地ハ二十ケ月ヲ過キ不下手者ハ上地申付ル事土地を購入した後、期限内にその土地を開墾して農地化するなどの利用を行なわなかった場合は、その土地を返納しなくてはならない。その期限は上等地で購入後12カ月、中等地で15カ月、下等地で20カ月である。
(北海道土地売貸規則第6条と同じ)
第14条官費募移ノ者開墾地完成ノ年ヨリ五ケ年除租其後二年間租額ノ内十分ノ一爾後全額ヲ可納事「官」の募集に応じて北海道に移住した人は、開墾完了の年から5年間は土地税を免除する。その後も2年間は規定額の90%を減免する。その後は規定の土地税を納付すること。
第15条従来永住ノ者及募移当年ヨリ挙家限ヲ以三年間ニ開墾スル土地ハ年々墾成ノ分点検ノ上地券相渡地代上納ニ不及但自今後募移ノ農夫ハ移著後三年間本条ニ可準事永住者」や、募集に応じて北海道に移住してきた人が、今年から3年間かけて開墾する予定の土地については、一年に1度ずつ開墾の進み具合の点検を受けることを条件に、地券を発行して「私有地」にするので、地代は納めなくてもよい。また今後、募集に応じて北海道に移住する農民の開墾地についても、同じように入植からの3年間の点検を条件に、地券を発行して「私有地」にする。
第16条除租満期後ノ制程ハ追テ其地ノ差等ニヨリ適当ニ可相定事免税期間が終わった後の課税方法については、その時の状況を見ながら適宜制定すること。
(北海道土地売貸規則第7条と同じ)
第17条採鉱漁猟等都テ殖産興業ノ見込アリテ出願スル者ヘハ其方法取調年限ヲ立貸地等ニ差許シ税則ハ出品ノ精粗多寡ニ随ヒ追テ適当ニ可相定但諸鉱山脈理等ノ甲乙ハ査了シテ可公布事鉱物資源の採掘場、漁場・狩猟場の開発など、殖産興業につながると見込んで土地売り下げを申請する人たちには、あらかじめ(官が)それぞれの計画を審査し、期限を設定して(売却ではなく)貸借契約を結ぶこともできる。また、納税については、生産物の品質や多寡に応じて適宜制定することにする。なお、各地の鉱脈について有望かどうかの調査結果は公布する。
(北海道土地売貸規則第8条と同じ)
第18条右等諸工業ノ新発明或ハ水陸運便等ニ費財尽力シテ国家人民ノ利ヲ興シタル者ヘハ其功業ノ大小軽重ニ因リ若干ノ土地ヲ付与シ或ハ専売除租ノ栄利ヲ与ル等ノ処置可有之事上に挙げたような工業開発に取り組んで、新たな発明や、陸運・海運のためのインフラ整備に私財を投じて、ひろく国家・人民に利益をもたらした功績者には、その内容に応じて、土地の付与、専売権、免税といった特典を与えることができる。
(北海道土地売貸規則第9条と同じ)
第19条函館及其近傍ノ地既ニ税則定タル分ハ此限ニ非ス且漁業税ノ義各郡一般当分従前ノ通タルルヘキ事函館およびその近隣のエリアで、すでに土地税制が整備されている場所は、この規則の適用外とする。また、漁業税制は各郡とも当分はこれまでのとおりにする。

原文パートは、『開拓使事業報告』附録布令類聚上,大蔵省,明18.11. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/784408 (参照 2024-10-12)から転載。現代語訳(仮)パートは、平田剛士が担当しました。

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