法令ID番号:01605164
明治10年12月13日 開拓使乙第25号布達
廃止年:不明
https://dajokan.ndl.go.jp/#/detail?lawId=01605164

https://www.digital.archives.go.jp/img/1383871
| 原文 | 現代語訳 | |
|---|---|---|
| 十年十二月十三日 | 1877(明治10)年12月13日 | |
| 北海道地券発行ニ付地所区分制限及地券申請証印税収納等ノ條款ヲ定ム | 北海道で地券を発行するにあたり、地所の区分・制限と、地券申請書類の印税などについて定める | |
| 開拓使布達 | 開拓使からの布達 | |
| 九年十二月第百六十一号ヲ以北海道地租ノ儀御布告相成候ニ付テハ土地丈量地価査定ノ上一般地券ヲ発行シ地租規則除租ノ年限ニ随テ地租ヲ課シ従前発行セシ地券ハ之ヲ改メ且既ニ課シ来リシ地租モ自今総テ地価百分ノ一ヲ徴スヘキニ付区分制限及地券申請證印税収納等ノ儀左ノ条款通相定 | 1876(明治9)年2月、北海道の土地税に関する第161号布告(「北海道地租ノ儀」)が出た。(役所は北海道の)土地を測量し、地価を査定したうえ、(土地所有者に)地券を発給して、免税期間の満了に合わせて、課税しなければならない。すでに発行済みの地券は(新たな書式に)書き換える必要がある。税率も今回、一律に「地価の1%」と改定された。土地の分類や制限、地券を発給する際の手数料(印税収入)などについて、次のように定める。 | |
| 1 | 第一条 地所ハ其種類ヲ分テ宅地耕地海産干場山林牧場トス但北海道地所規則ニ掲載セル漁浜昆布場ヲ自今改テ海浜干場ト称スヘシ | 第1条 土地は、「宅地」「耕地」「海産干場(かいさんかんば)」「山林」「牧場」のカテゴリーに分類して管理する。北海道地所規則(明治5年9月、開拓使達)に「海浜昆布場」とある土地は、今後は「海産干場」と呼び方を変える。 |
| 2 | 第二条 耕地宅地ハ何人ニ拘ハラス人民各自之ヲ所有セシメ海産干場ハ海産採取ノ業ヲ営ム者ニ非レハ之ヲ所有セシメス山林川沢原野河岸海岸等ハ総テ官有地トシ其差支ナキ場所ハ望ニ由リ貸渡或ハ売渡ス事アルヘシ尤官有地ヲ貸渡トキハ貸地證書ヲ附与シ貸地料トシテ地価百分ノ一ヲ可取立但海産干場ハ所有者ノ都合ニ依他人ヘ貸渡テ営業セシムルハ妨ナシトス尤貸渡トキハ必其事由ヲ具シテ願出ヘシ又本条河岸海岸等自費埋立或ハ既ニ民有ニ属セシ類ハ之ヲ私有セシメル事アルヘシ | 第2条 「耕地」「宅地」は民間に所有させること。「海産干場」は、水産業(漁業)を営む人以外には所有させない。「山林」、また河川・原野・河岸・海岸の土地は、すべて官有地とするが、とくに支障がなければ、希望者にレンタルしたり、分譲したりしても構わない。官有地をレンタルする際は、貸渡証明書を発給し、地価の1%のレンタル料を徴収すること。「海産干場」の所有者は、自分の都合に合わせ、土地を第三者にレンタルして漁業を営むことができる。その際、土地所有者は(役所に)理由書を提出させること。河川・原野・河岸・海岸の土地であっても、すでに民間人が利用している場合は私有地と認め(て地券を発給す)る場合もあるだろう。 |
| 3 | 第三条 牧場ハ各郡村ニ於テ其経界歩数ヲ定官有地第三種ニ編入シ官民共同ノ用ニ充ヘシ尤人民牧場営業ノ為ニ要求スル地所ハ右ノ外ニソノ経界歩数ヲ定貸渡或ハ売渡事アルヘシ | 第3条 「牧場」は、各郡・各村で境界線を決めて面積を確定したうえ、「官有地第3種」に編入し、官・民が共同利用する土地とする。民間の牧畜業希望者に対しては、官有地(第3種)とは別に新たにエリアを定め、面積を確定して、レンタルまたは分譲すること。 |
| 4 | 第四条 道路狭隘ニシテ往来運輸ノ障礙ヲ為ス者ハ家屋倉庫等ヲ営構セル地面ト雖必貸地ト為スヘシ尤土地ノ形勢ニ因リ道路敷地ノ内ヲ貸渡置事アルヘシ | 第4条 すでに家屋や倉庫が経っている場所でも、通行の妨げになっているところは必ず「貸地」(官有地)とすること。地形によっては、道路用地でもレンタルできる。 |
| 5 | 第五条 租額ハ歳ノ豊歉ニ因テ之ヲ変更スルコトナシト雖天災地変ニ因テ地形変換ノトキハ実地ヲ点検シ減租或ハ除租等ノ処分ヲ為スヘシ | 第5条 年ごとの作物の豊凶などによって税額を変えることはしない。天災が起きて地形に変化があった場合は、現地を点検したうえ、減税・免税の措置をとること。 |
| 6 | 第六条 各種ノ地所除租収租ノ別ナク地券付与ノ後ハ該地ノ全部或ハ其幾分ヲ裂キ売買譲渡書入質入等総テ其ノ規則ニ照シ所有者ノ自由タルヘシ但地券発行ノ後収租地売買ノ際地価増減ヲ生スル者ハ七年五月第五十三号御布告ニ照準スル者トス尤海産干場ハ一券面ノ地所ヲ裂テ之ヲ売買譲渡ス可ラス | 第6条 各カテゴリーの土地について、免税地・課税地のどちらについても、地券の受給者はその土地の全部、あるいは一部を、関連する規則に従って、自由に売買・譲渡・抵当・質入できる。地券に記載された地価と異なる価格で売買する時は、明治7(1874)年5月・第53号布告に従うこと。ただし、「海産干場」カテゴリーの土地は、土地の一部だけを分譲することはできない。 |
| 7 | 第七条 九年十月漁場更正ノ際一旦上地申付更ニ割渡タル海産干場並除租年限中売買譲渡セル各種地所ノ除租年限ハ最初定タル年ヨリ通算(例ヘハ除租七年ノ地ヲ五年目ニ売買スルトキハ買受タル者其買得タル年ヨリ三年間除租四年目ヨリ収租ノ類)スヘシ | 第7条 1876(明治9)年10月の「漁場更正」で一時的に(民間から「官」に)返還(上地)させ、改めて分譲した海産干場、また免税期間内に売買・譲渡された各カテゴリーの土地について、免税期間は最初に免税を決めた年から数えること。例:7年間免税とされた土地を、5年目に購入した場合、購入年から3年間は免税地、4年目以降は課税地とする。 |
| 8 | 第八条 地券ハ地所々有主タル確證ニ付大切ニ保存シ代替並売買譲渡及ヒ水火盗難等ニテ亡失セシトキハ速ニ其事由ヲ具シ書替ヲ願出ヘシ | 第8条 地券は、その土地の所有者である証明書なので、大切に保管すること。相続・売買・譲渡によって所有者が変わった場合、また火災・水害・盗難などによって地券が失われた場合は、すみやかに理由書を添えて再発給を申し出ること。 |
| 9 | 第九条 除租地所有ノ者ハ除租満期ノ年六月三十日迄ニ最前申請シ券状ヲ差出収租ノ券状ト引換ヲ願出ヘシ | 第9条 免税地の所有者は、免税期限の年の6月30日までに(役所に)免税地券を提出し、課税地券への変更を申し出ること。 |
| 10 | 第十条 新規書替共地券及貸地證ヲ申請シトキハ必請取証書ヲ差出ヘシ | 第10条 新規・変更のいずれの場合も、地券の発給を受けたら、必ず受取証を(役所に)提出すること。 |
| 11 | 第十一条 収租地々券新規申請並売買ニ付書換ノ節ハ券面ノ地価ニ随ヒ毎一枚証印税トシテ左ノ通相納ムヘシ | 第11条 課税地券の新規発給・変更を申請する人は、地券記載の地価に応じて、地券1枚につき以下の証印税を納付すること。 |
| 12 | 第十二条 除租地々券新規申請並売買譲渡等ニ付書替及収租地代替授与水火盗難等ニテ書替ノ節ハ証印税トシテ毎一枚金八厘ヲ納貸地證書新規並書替ノ節ハ手数料トシテ金八厘ヲ納ムヘシ | 第12条 免税地券の新規発給申請、売買・譲渡などにともなう変更申請、課税地券の相続・売買・譲渡によって所有者が変わった場合、また火災・水害・盗難などによって地券が失われた場合の再発給の申請をする時は、地券1枚につき8厘の証印税を納付すること。また、貸地証の新規発給・変更を申請する時は、地券1枚につき8厘の手数料を支払うこと。 |
| 13 | 第十三条 海産干場ハ海産採取ノ為ニ所有セシムル者ナレハ営業ノ差等ニ随テ地所坪数及間数ノ制限ヲ定ル大略左ノ如シ尤其制限ハ土地ノ形勢ニ因リ之ヲ増減スル事アルヘシ又旧来戸口稠密ニシテ此制限ニ循ヒ難キ場所ハ従前ノ慣習ニ依リ之ヲ所有セシムル事アルヘシ且該地ノ形ヲ変セス鯡場ニ於テ鮭鮭場ニ於テ鯡其他ノ漁業ヲ営ム等ノ類ハ総テ営業者ノ自由タルヘシ但一区ノ干場ニ於テ網数統船数隻ヲ用テ営業スル者ハ一統或ハ一隻毎ニ制限坪数ノ半ヲ増加シ鯡差網ハ十放毎ニ其四分ノ一ヲ増加スヘシ | 第13条 「海産干場」は漁業のために設定するカテゴリーであり、経営規模に応じて所有できる土地のサイズの上限をおおむね次のように規定する。規定のサイズは、現地の地形に応じて変更できる。住宅が密集していて、この規定の通りに海産干場を確保できない場合は、それまでの慣習に従い、土地所有を認める場合もある。水産業者は、ニシン漁場の規定に従い設定した海産干場でサケ漁をしたり、逆にサケ漁場の規定に沿って設定した海産干場でニシン漁をしたり、自由に利用できる。同じ海産干場で複数の網・漁船を用いる場合は、網1カ統・漁船1隻ごとに、所有上限面積を50%ずつ拡大する。ニシン刺し網漁の海産干場の所有上限面積は、網が10枚増えるごとに25%ずつ拡大する。 |
| 14 | 第十四条 干場坪数ノ制限ハ前条ノ割合ヲ以之ヲ定ムト雖奥行浅クシテ其間数制限ニ満難キ場所ハ適度ニ随テ表口ノ間数ヲ増シ且奥行ノ間数其制限ニ過ルモ土地ノ形勢ニ因リ他ノ障碍ヲ為サ丶ル者ハ之ヲ許ス事アルヘシ | 第14条 所有できる「海産干場」面積の上限は、前条に示す割合で決めるが、十分な奥行きが取れない地形の場所では、表口(汀線沿い)の距離を増やして規定の面積を確保してもよい。ほかに支障がなければ、奥行きが規定の距離をオーバーしても構わない。 |
| 15 | 第十五条 海産干場ノ海岸地浪打際(満潮ノトキヲ云)五間乃至十五間ハ之ヲ官有地トシテ干場所有ノ者ニ貸渡山岳海浜ヘ突出土地狭隘ニシテ右間数ノ外私有セシムヘキ余地無之場所ハ総テ官有地トシテ之ヲ可貸渡但営業者ノ都合ニ依所有地ヲ他人ニ貸渡トキハ該地接続ノ官有地ハ必一時返納ノ上該地借用人ヨリ更ニ右官有地ノ借用ヲ願出ヘシ尤本条間数ノ内ヲ道路ノ敷地ニ充ル事アルヘシ | 第15条 「海産干場」を設ける海岸は、波打ち際(満潮時)から5~15間(9.1~27.3m)分の土地は官有地のままとして、その「海産干場」所有者にレンタルする。山が海岸に迫っていて利用できる土地が狭く、海岸5~15間(9.1~27.3m)幅の土地(官有地)以外に私有可能な土地がない場所は、すべて官有地のまま、漁業者にレンタルすること。 |
| 16 | 第十六条 従前該地土着ノ人民ニシテ旧来之ヲ所有シ干場内ニ居住ノ者ニ限其制限ニ過ル一割(千坪ニ付百坪ノ割合)以下ノ地ハ之ヲ所有スルヲ許スヘシ | 第16条 「海産干場」のうち、以前からそこで暮らしてきた人(「土着の人民」)が従来その土地を所有し、そのエリア内に暮らしている場合は、その「海産干場」面積の10%以内を上限に(「宅地」として?)所有できる。 |
| 17 | 第十七条 海産干場坪数ノ制限ハ居屋漁舎倉庫ノ敷地ヲ合テ之ヲ算スヘシ但本条居屋漁舎等ノ敷地除租年限ハ地所規則第一条ノ通タルヘシ | 第17条 「海産干場」の規定面積には、エリア内の住宅・作業場・倉庫の敷地を含む。「海産干場」内部のこれら住宅・作業場・倉庫敷地の免税期間は、地所規則第1条(今年=1877年から7年間)に従うこと。 |
| 18 | 第十八条 海産干場所有ノ者地所割渡ノ儘営業ニ着手セスシテ売買譲渡スルヲ許サス割渡ノ後一周年間着手セサル者及着手後中止スル者ハ上地申付ヘシ尤甲ニ於テ既ニ着手セル場所ヲ乙ヘ売渡乙ニ於テ相当ノ営業ヲ為サ丶ル歟或ハ中止スル者ハ土地売貸規則第三条ニ掲載セル地価上等ノ割ヲ以之ヲ買上ヘシ | 第18条 「海産干場」所有者は、地券の発給を受けた後、漁業に着手することなくその土地を売買・譲渡してはならない。地券受給から1年以内に漁業を始めない人や、いったん始めてもやめてしまった人には、土地の返還(「上地」)を命じること。所有者Aが漁業を始めた後、その「海産干場」をBに売却し、Bがそこで漁業を続けなかった場合、あるいは漁業をやめてしまった場合は、土地売貸規則第3条で定めた「上等(ハイクラス=1.5円/1000坪)」とみなし、(役所は)その地価で買い戻すこと。 |
| 地券ニ記セシ地価 | 証印税 |
|---|---|
| 二円迄 | 八厘 |
| 二円以上百円迄 | 一銭五厘 |
| 百円以上二百円迄 | 十五銭 |
| 二百円以上五百円迄 | 三十三銭 |
| 五百円以上千円迄 | 四十銭 |
| 千円以上二千円迄 | 五十銭 |
| 二千円以上五千円迄 | 八十三銭 |
| 五千円以上 | 一円二十五銭 |
| ジャンル | 面積の制限(㎡) | 海面表口(m) | 奥行き(m) |
|---|---|---|---|
| ニシン・イワシ建て網(1カ統) | 3310 | 91 | 36.4 |
| ニシン・イワシ・サケ曳き網(1カ統) | 4965 | 109.2 | 45.5 |
| ニシン刺し網(10枚) | 662 | 18.2 | 36.4 |
| サケ建て網(1カ統) | 1655 | 45.5 | 36.4 |
| 大房網(1カ統) | 1655 | 45.5 | 36.4 |
| 昆布刈り船(1隻) | 1489.5 | 45.5 | 32.76 |
先住民族アイヌに対する「同化政策」の多くは、開拓使(1869-1882)が出した「布達(ふたつ)」や「達(たっし)」によって実行されています。そこにはなんと書いてあったのか――?
開拓使が発した法令は、明治政府が『開拓使事業報告』『法令全書』『開拓使布令録』といったインデックスにまとめています。国立国会図書館が運営する検索サイト「日本法令索引〔明治前期編〕」を利用すると、それらインデックスから目当ての法令ページを探して、デジタルスキャン画像を閲覧できます(このページ冒頭の法令ID番号も、「日本法令索引 明治前期編」の分類に基づいています)。
とはいえ、明治初期の高級役人たちが作った法令は、候文(そうろうぶん)スタイルで書かれていて、現代の私たちには一目ではなかなか理解できません。そこで、冒険的なことは承知の上で、だれにでも読みやすいような現代語訳を試みました。
当時の法令文には、先住民族に対する攻撃的・否定的な表現が数多く見られます。現代の私たちが読むと、人種主義に根ざしたヘイトスピーチそのものに映りますが、当時の日本政府による先住権侵害ぶりをあらわす「動かぬ証拠」として、あえてそのまま訳出しました。(平田剛士)
