さっぽろ自由学校「遊」2025年後期 講座「先住民族の森川海に関する権利7―先住民族の権利と国・企業の責任」開講中

現代語訳・北海道地券発行条例(1877年)

明治10年12月13日  開拓使第15号達
法令ID番号00801794
改正:明治12年1月17日開拓使第15号達 北海道地券発行条例
https://dajokan.ndl.go.jp/#/detail?lawId=00801794

開拓使布令録編輯課 [編纂]『開拓使布令録』明治10年[上],[開拓使],1879印刷. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/995340
原文現代語訳
第十五号 十二月十三日第15号 1877(明治10)年12月13日
昨明治九年十二月第百六十一号ヲ以テ北海道地租ノ義御布告相成候ニ付土地丈量地所ノ制限区分ヲ定メ地券ヲ附与シ地租課収可致候條別冊地券発行条例ニ照準施行可致右ハ土地整理民産保護ノ要務ニ付取調向等精々注意可致旨相達候事昨1876(明治9)年12月の第161号文書にあるように、「北海道の土地税に関する布告」が出たので、別冊の「地券発行条例」に従って、土地の測量とカテゴリー分けを実施し、地券を発給して地租(土地税)を徴収すること。これは土地を整理し、民間の財産を保護するための重要な任務なので、注意深く調査にあたること。
(別冊)(別冊)
北海道地券発行条例北海道地券発行条例
第一章 総則第一章 総則
第1条第一条 土地ノ種類ヲ分チ宅地耕地海産干場牧場山林トシ官有地ヲ除クノ外人民各自之ヲ所有セシメ其経界歩数ヲ正シ地位等級ヲ定メ地券ヲ発シ地租ヲ課スヘシ第1条 土地を、宅地・耕地・海産干場(かいさんかんば)・牧場・山林のいずれかのカテゴリーに分類する。そのうえで、官有地以外の土地は、すべて民間人の所有地にする。それぞれの所有地は境界線を定め、面積を測量して等級を決定し、所有者に地券を発給して、課税すること。
第2条第二条 地租ハ北海道地所規則並土地売貸規則ニ掲載セル除租満期ノ翌年ヨリ課収スヘシ第2条 地租(土地税)は、「北海道地所規則」や「土地売貸規則」に掲載した免税期間が満了した翌年から徴収すること。
第3条第三条 河川海岸等ハ総テ官有地トシ其差支ナキ場所ハ人民ノ望ミニ因テ之ヲ貸渡シ貸地ノ証ヲ附与シ貸地料トシテ地価百分ノ一ヲ取立ヘシ但既ニ私有ニ属セル分並自費ヲ以テ水面ヲ埋立タル等ノ類ハ本条ノ地所ト雖モ之ヲ私有セシムルコトアルヘシ第3条 川岸・海岸などはすべて官有地とする。そのうち、さしつかないエリアについては、希望に応じて民間にレンタルできる。貸地証書を発給し、レンタル料は地価の1%とすること。すでに私有地となっている土地、また土地所有希望者が自費で水面を埋め立てるというような場合は、この第3条の対象地(川岸・海岸など)であっても、私有地として所有を認める場合もある。
第4条第四条 土地査定地券発行ノ後ハ其地価ニ随テ年々一定ノ租額ヲ課収シ年ノ豊歉等ニ因テ之ヲ変更スルコトナシ第4条 土地を測量して地券を発行した後は、その地価に応じて、定率の税額を毎年、徴収する。年ごとの作物の豊凶などによって税額を変えることはしない。
第5条第五条 天災地変ニ因テ地形変換スルトキハ実地ヲ点検シ損害ノ厚薄多少ニ随ヒ該地ノ全部或ハ其幾分ヲ別チ年限ヲ定メ減租或ハ除租等ノ処分ヲナスヘシ第5条 (洪水・地震などの)天災のせいで地形が変わった場合は、現地を再検査し、被害の規模に応じて、その土地の面積の全部、あるいは一部を区画し、期限年を決めて、減税・免税の措置をとること。
第6条第六条 各種ノ地所除租収租ノ別ナク地券附与ノ後ハ売買譲渡書入質入等総テ其規則ニ照シ所有者ノ自由ニ任スヘシ但地券発行ノ後地価ノ増減ヲ生スルモノハ明治七年五月第五十三号御布告ニ照準スヘシ第6条 地券発給を受けた人は、その土地がどのカテゴリーであれ、また課税地であれ非課税地であれ、売買・譲渡・抵当設定・レンタルなど、それぞれの規則に基づき、すべて自由にできる。なお地券発給後に地価が上がったり下がったりした場合は、1874(明治7)年5月第53号布告に従って処理すること。
第7条第七条 地券附与ノ後ハ耕地宅地共一券面ノ地所ヲ裂キ売買譲渡等其規則ニ照シ所有者ノ自由ニ任スヘシ第7条 耕地・宅地の地券発給を受けた人は、規則に従い、その土地を自由に分譲したり売買したりできる。
第8条第八条 明治九年十月漁場改正ノ際一旦上地申付更ニ割渡シタル海産干場並除租年限中売買譲渡セル各種地所ノ除租年限ハ最初定メタル年ヨリ通算 仮令ハ除租七年ノ地ヲ五年目ニ売買スルトキハ買受ル者其買得タル年ヨリ三年間除租四年目ヨリ収租ノ類 スヘシ第8条 1876(明治9)年10月施行の「漁場改正」でいったん(国庫に)返納してから改めて分譲を受けた海産干場、また免税期間中に売買・譲渡された各カテゴリーの土地の免税期間は、最初の免税開始年を起点に通算すること。例:7年間免税の土地をその期間5年目に購入した場合、購入者は5年目以降7年目までの3年間は免税、翌年から課税対象になる。
第二章 土地検査ノ手続第2章 土地検査の手続き
第9条第九条 土地丈量ハ各地ノ除租年限ニ随テ順次整理スヘシ第9条 土地の測量は、それぞれの免税期間が終わるまでに順番に実施する。
第10条第十条 土地ヲ丈量スルトキハ各庁長官ノ名ヲ以テ予メ其施行スヘキ郡村ノ人民ヘ着手ノ期程ヲ布達シ期日ヲ定メ各自所有ノ地所坪数ヲ記シ図面ヲ副ヘ之ヲ差出サシムヘシ第10条 土地を測量する時は、対象の郡・村の住民に対し、前もって管轄庁(開拓使札幌本庁・函館支庁・根室支庁)長官名で測量実施の予定とスケジュールを知らせ、それぞれ自分が所有する土地の位置と面積を記入した書類に地図を添えて提出させること。
第11条第十一条 地所各種ノ区分ハ土地ノ形勢ニ因リ自然区域ヲ為スモノニ就テ之ヲ別ツ宅地区域中ニ籠ル田畑ハ宅地トシ耕地並海産干場区域中ニ在ル居屋ハ耕地並海産干場トスヘシ尤該区域中ト雖モ其区画判然タル別種ノ地所及右ニ接続シテ一区域ヲ為ス別種ノ地所ハ其種類ヲ区分スヘシ但従来海浜干場中ニアル居家漁舎倉庫ノ敷地等除租ノ年限ハ地所規則第一条ノ通タルヘシ第11条 それぞれの土地をカテゴリー分けするさい、地形など自然条件によって判断できる場合は、そのようにすること。「宅地」の中に含まれる田畑は、「宅地」カテゴリーに入れる。「耕地」「海産干場」の中に含まれる住宅地は、それぞれ「耕地」「海産干場」に分類する。ただし、まわりを同じカテゴリーの土地に囲まれていても、そこだけ明らかに別カテゴリーだと考えられる土地や、そういった土地に隣接して1区画が形成されている場合は、異なるカテゴリーに分類すること。なお、海浜干場エリアに含まれる住宅・作業スペース・倉庫などの敷地について、免税期間は地所規則第1条に従うこと。
第12条第十二条 土地ヲ丈量スルトキハ毎村町各地ノ経界ヲ区分シ其歩数等ヲ詳記シタル地図ヲ製スヘシ第12条 土地の測量に当たる際は、各村町の境界線を引いて、それぞれの面積などを詳しく記入した地図を作成すること。
第13条第十三条 各種ノ地所官有民有ノ区別及其名称ハ総テ七年十一月第百二十号公布ニ拠テ処分スヘシ第13条 土地の官有・民有の区別、また地名は、1874(明治7)年11月の第120号公布の方法に従うこと。
第14条第十四条 新ニ道路ヲ開設スヘキ場所ハ丈量施行ノ際明治九年第六十号御達書ニ拠テ其間数ヲ定メ従前開設セル道路ノ左右既ニ民有地ニ係リ間数制限ニ適シ難キ分ハ往来運輸ノ障礙有無ヲ計カリ成ルヘク旧慣ニ依ルヘシ新設ノ道路ト雖地形ニ依リ其間数制限ニ循ヒ難キモノハ便宜査定スヘシ但旧来ノ道路ト雖トモ敷地狭隘ニシテ往来運輸ノ障碍ヲ為スモノハ家屋倉庫等ヲ営構セル地面ト雖トモ必ス貸地ト為ス可シ又土地ノ形況ニ依リ道路敷地ノ内ヲ貸渡シ置クコトアルヘシ第14条 道路の新設が必要な場所は、1876(明治9)年60号公達の定める通りの道路幅を想定して〈道路面積を除外して地所の面積を〉測量すること。既存の道路の左右に民有地があり、規定の道路幅を確保できない場合は、交通の妨げになっていないことを確かめながら、できるだけ現状を維持すること。地形によって規定の道路幅を確保できない場所は、ケースバイケースで〈道路面積を設定し〉測量すること。道路脇の土地が狭くて、そこに建つ住宅や倉庫が交通を妨げている場合は、(宅地カテゴリーに分類して民有地として地券を発行するのではなく)必ず貸地(官有地のレンタル)とすること。地形などの状況によっては、道路敷地内の土地のレンタルを認める場合もある。
第15条第十五条 山林川沢原野等ハ当分総テ官有地トシ其差支ナキ場所ハ人民ノ望ニ因リ貸渡シ或ハ売渡スコトアルヘシ第15条 山林・河川・原野などは、いったんすべて「官有地」にする。そのうち、さしつかえのない土地は、民間からの希望があれば、レンタルあるいは分譲できる。
第16条第十六条 旧蝦夷人住居ノ地所ハ其種類ヲ問ハス当分総テ官有地第三種ニ編入スヘシ但地方ノ景況ト旧蝦夷人ノ情態ニ因リ成規ノ処分ヲ為スコトアルヘシ第16条 アイヌ民族(【旧蝦夷人】)が居住している土地は、いったんすべてを「官有地第3種」にすること。そのうえで、地元の発展状態やアイヌ民族の状況をみはからって「成規の処分」(和人の土地所有者と同じ手続き=カテゴリー決定・境界画定・測量・地券発行・課税)を進めなさい。
第三章 地価査定ノ方法第3章 地価査定の方法
第17条第十七条 地価査定ノ方法ハ丈量終テ各地ノ等級ヲ分チ土地ノ景況ニ依リ収獲売買入札ノ三法ヲ用ヒテ之ヲ概定シ然ル後全道一般ノ地位ヲ比較シテ之ヲ査定スヘシ第17条 測量を済ませ、各地の等級を判定し終えた時点で、「収獲法」「売買法」「入札法」の3つの方式でおおざっぱな地価を査定する。その後、北海道全体でバランスをとりつつ調整を図ること。
第18条第十八条 各地ノ等級ハ僅少ノ差ヲ以テ瑣細ニ之ヲ区分セス一村ヲ通観シ其地位概略相同シキモノヲ類聚シテ之ヲ区別シ又一郡ヲ通観シテ各村ノ等級ヲ定ムヘシ第18条 等級判定は、土地ごとに細かく調べる必要はない。村全体を見渡しながら同等の土地ごとに等級を決めたり、郡全体を見渡して各村の土地の等級を決めること。
第19条第十九条 各村ノ等級ヲ定ムルニハ甲乙二村各種ノ一等地ヲ取テ之ヲ比較シ其差等 乙村ノ一等地ハ甲村ノ二等地或ハ三等地ニ当ルノ類 ニ因リ之ヲ分ツ丙村ノ乙村ニ於ル丁村ノ丙村ニ於ルモ総テ右ニ準スヘシ第19条 村ごとの等級分けは次のように行なう。A村とB村、それぞれの1等地を抽出して比較し(A村の1等地はB村の2等地あるいは3等地と同等、など)ランクを決めること。同じようにC村をB村と比べ、D村をC村と比べ……とランク決めを繰り返しなさい。
第20条第二十条 市街ハ一券面ノ地所其表裏等地位ノ差等アルモノハ之ヲ区分セス折衷斟酌シテ一ノ等級ニ定メ一町内ヲ通観シテ之ヲ類別シ然ル後一市街ヲ通観シテ各町ノ等級ヲ分ツ其比較査定ノ方法ハ各村ノ例ニ倣フヘシ第20条 市街地で、同じ地券に登録された土地に、表通り・裏通りの違いなどのせいでランクの異なるエリアが並存する場合は、両方のランクを書くのではなく、その中間を取るなど、ケースに応じて全体に一つの等級を与えること。それからひとつの町内全体を見渡して等級を決め、さらにひとつの市街地全体、ひとつの町全体を見渡して等級を決めること。町同士の等級のバランスの取り方は、村同士のバランスの取り方と同じようにすること。
第21条第二十一条 耕地ノ等級ヲ定ムルニハ地質ノ厚薄水旱害ノ多寡等ヲ参酌シ宅地ハ土地ノ景況戸口ノ粗密及運輸ノ便否等ヲ参酌スヘシ第21条 耕地の等級区分は、土壌の豊かさ、水害・旱魃害の頻度などを踏まえて決定すること。宅地の等級区分は、そのエリアの経済状況、人口密度、交通の便などを踏まえて決定すること。
第22条第二十二条 海産干場ハ漁業ノ便否或ハ地質ノ適否及漁獲ノ多寡運輸ノ便否等ヲ斟酌シテ其等級ヲ分ツヘシ第22条 海産干場の等級区分は、漁業の利便性、地形のよしあし、漁獲量、交通の便などを踏まえて決定すること。
第23条第二十三条 収穫法ヲ用ヒテ地価ヲ定ムルハ明治六年大蔵省達地方官心得書第十二章検査例第一則ニ法リ其収穫 菽麦ノ類 ノ多寡ニ因テ地価ノ差等ヲ調査シ入札法ハ同上旧規ヲ斟酌シテ之ヲ施行スヘシ第23条 「収穫法」を利用して地価を算定する場合は、大蔵省が1873(明治6)年に出した「地方官心得書」第12章の検査例第1則に従って、(麦や豆類の)収量に応じて地価を決定する。「入札法」を使う場合も、同じ「心得書」の検査例を参照すること。
第24条第二十四条 売買代価ヲ用フルトキハ明治九年地租改正事務局別報第十四号市街地租調査法細目第三条ニ法リ之ヲ調査スヘシ第24条 「売買代価法」を使う場合は、1876(明治9)年に地租改正事務局が出した別報「第十四号市街地租調査法細目」の第3条に従って調査すること。
第25条第二十五条 地価ハ各地悉ク調査スルヲ要セス土地ノ景況ニ従ヒ一町村或ハ数村町六七ケ所許ノ地所ニ就テ之ヲ調査シ適実至当ノ価位ヲ得テ然ル後各地ノ等級ニ随ヒ類推仮定シ又一郡内各地ノ等級及価位ヲ通観シテ之ヲ定ムヘシ第25条 すべての土地の地価を調査する必要はない。状況に応じて、ひとつの町・村、あるいはいくつかの町・村から6~7カ所を抽出して調査し、それぞれ地価を算定した後、そのデータを元に、各土地の等級に応じて、あるいは郡内各地の等級に応じて地価を決めること。
第26条第二十六条 郡村宅地ハ耕地ニ比較シ海産干場ハ其接近セル宅地耕地ニ比準シテ之ヲ斟酌シ其平準ヲ失ハサルヲ要スヘシ第26条 郡村部の「宅地」(の地価)は、(同じ郡村内の)「耕地」(の地価)とのバランスを考慮して決めること。「海産干場」(の地価)は、近隣の「宅地」「耕地」(の地価)とのバランスを考慮して決めること。
第27条第二十七条 市街地宅地並海産干場ノ地価ハ百坪若干耕地等ハ一段若干ト定ムヘシ第27条 市街地・宅地・海産干場の地価は100坪(3.3a)単位、耕地などの地価は1段(反)(9.9a)単位で表示すること。
第28条第二十八条 地価調査ノ方法ハ前各条ニ拠ルヘシト雖トモ全道地価概定ノ後之ヲ査定スルハ札幌庁下各種ノ地所ハ函館庁下ノ地所ヲ標準 札幌ノ一等地ハ函館ノ二等地或ハ三等地ニ準スルノ類 トシ根室庁下ハ札幌庁下ヲ標準トスル等各其類ヲ推シ比擬斟酌シテ全道各所ノ平準ヲ失ハサルルヲ要スヘシ第28条 地価の調査は、ここまでの各条項で指示した通りに行なうが、北海道全体の地価を概ね決定した後、札幌本庁管轄エリアの土地については函館支庁管轄エリアの地価を基準にして(札幌エリアの1等地は函館エリアの2等地あるいは3等地にあたる、といった具合に)調整し、また同じように根室支庁管轄地の地価は札幌エリアの地価を基準に調整し直して、北海道全体としてのバランスを失わないようにすること。
第四章 地券調製ノ手続第4章 地券作成の手続き
第29条第二十九条 地券ハ全道一般地価査定ノ後之ヲ発行スヘシ第29条 北海道全体の地価査定が済んでから、地券を発行すること。
第30条第三十条 第二章第十二条ニ掲載セル地図ニ就キ一村一町毎ニ各地順次ニ番号ヲ附シ其歩数ヲ記シ所有者ノ姓名ヲ署シ除租地収租地貸地ノ別ナク一村一町限リ逐号類聚シテ地券調査録ヲ編成スヘシ第30条 第12条で作成を指示した地図は、村ひとつ、町ひとつごとに分け、ひとつの土地ごとに順に番号をふって、面積と所有者の氏名を記入すること。課税地・非課税地・貸地の区別はせず、村ごと・町ごとに集約して「地券調査録」を作成すること。
第31条第三十一条 地券調査録編成ノ後ハ各地番号ノ順次ニ随ヒ地券ヲ製シテ所有者ニ附与スヘシ第31条 地券調査録が完成したら、各地番号順に、所有者に地券を発給すること。
第32条第三十二条 地券録甲乙二部ヲ製シ地券付与ノ際収租地官有地ハ甲除租地ハ乙ノ地券録ニ券面ノ番号坪数所有者ノ姓名附与ノ年月日ヲ記シ券状ト割印スヘシ第32条 甲・乙2部の「地券録」を作成すること。地券を発給する際には、課税地と官有地は地券録「甲」に、非課税地は地券録「乙」に、それぞれ地券ナンバー、面積、所有者の氏名、地券発給年月日を記入し、地券と調査録を重ねて割印を押すこと。
第33条第三十三条 地券ノ法式収租地ハ第一号官用地ハ第二号除租地ハ第三号雛形ニ照準シテ之ヲ製スヘシ第33条 地券は、以下の書式に従って作成すること。課税地の地券:第1号書式官用地の地券:第2号書式非課税地の地券:第3号書式
第34条第三十四条 貸地ハ第四号雛形ニ照準シタル貸地ノ証ヲ作リ其番号坪数借用者ノ姓名附与ノ年月日ヲ貸地録ニ記シ割印スヘシ第34条 貸地(官有地)については、第4号書式にしたがって貸地証書を作成すること。「貸地録」に証書ナンバー、面積、借用者の氏名、貸地証書発給年月日を記入し、貸地証書と重ねて割印を押すこと。
第35条第三十五条 除租地ハ除租ノ満期ニ随ヒ該年六月三十日マテニ最前附与セシ券状ヲ差出サシメ収租ノ券状ト交換附与シ地券録甲部ヨリ乙部ニ移載シ第四章三十二条ノ手続ヲナスヘシ第35条 非課税地券の受給者には、免税期間が終了する年の6月30日までに地券を返納させること。改めて新しい課税地券を発給し、地券録【甲】〈乙と取り違え?〉から地券録【乙】〈甲と取り違え?=現代語訳者〉に記録を移動して、第4章第32条の手続きをとること。
第36条第三十六条 地券所有ノ者代替並売買譲渡ノ節ハ速ニ其事由ヲ具状シ地券書換ヲ願ヒ出シメ地券録ヲ更正シ第三十二条ノ手続ヲナスヘシ第36条 地券受給者が代替わりをしたり、第三者に土地(地券)を売却・譲渡した場合は、すみやかに(役所に)届け出て、理由を添えて地券書き換えを申請させること。(申請を受けた役所は)地券録を更新し、第32条の手続きをとること。
第37条第三十七条 水火盗難等ニテ地券ヲ亡失セシトキハ速ニ書換ヲ願出シメ之ヲ推究シテ其事由判然タレハ新ニ地券ヲ製シ第三十二条ノ手続ニ従テ之ヲ附与スヘシ第37条 地券受給者が水害・火災・盗難などに遭って地券を失ってしまった場合は、すみやかに(役所に)地券書き換えを申請させること。(申請を受けた役所は)事情を調べ、はっきりした理由があれば、新しい地券を発給して第32条の手続きをとること。
第38条第三十八条 地券所有ノ者一券面ノ地所ヲ裂キ之ヲ売買譲渡セント欲ルトキハ其坪数及ヒ代価等ヲ詳記シ其事由ヲ具シテ地券書換ヲ願出シムヘシ第38条 自分の土地の分譲を希望する地券受給者には、面積・価格などを詳しく記した書類を添えて、地券書き換えを申請させなさい。
第39条第三十九条 前条出願其事由判然タルトキハ本地分地各別ニ地券ヲ製シ第三十二条ノ手続ニ従テ之ヲ附与スヘシ尤各券面ニ記スル地所番号ハ之ヲ改メス券面番地ノ下ニ甲乙号ノ符字ヲ記シテ之ヲ別ツヘシ第39条 第38条の申請者に対して、理由がハッキリしている場合は、分割するそれぞれの土地について、新しい地券を作成し、第32条の手続きを踏んで発給すること。このさい、従来と同じ地券番号を使用し、新規発給する地券の土地番号の下に甲乙……と記入して区別しておくこと。
第40条第四十条 前各条地券附与ノ節ハ必ラス受取証書ヲ差出サシメ分類編輯シテ地券録各部ノ附録ト為スヘシ第40条 地券を発給する時、受給者から受取証を必ず提出させること。受取証は分類・整理して地券録(甲・乙)と一緒に保管すること。
第41条第四十一条 貸地証所持ノ者代替並水火盗難等ニテ証書ヲ忘失セシトキハ地券同一ノ手続ニ従テ書替ヲ願出シメ貸地録ヲ更正シ第三十四条ノ式ニ拠テ之ヲ附与スヘシ尤新規書換トモ証書附与ノ節ハ必ラス受取証書ヲ差出サシメ貸地録ノ附録トナスヘシ第41条 貸地証受給者が代替わりをしたり、水害・火災・盗難などで貸地証書を失ってしまった場合は、地券の場合と同じように、書き換え・再発給を申請させ、貸地録を更新し、第34条の通りに再発給すること。新規発給・再発給のいずれの場合も、受給者から必ず受取証を提出させて、貸地録と一緒に保管すること。
第42条第四十二条 収租地地券新規附与並売買書替ノ節ハ券面ノ地価ニ毎一枚証印税トシテ左ノ通取立ヘシ第42条 課税地の地券を新規発給する場合、また売買によって名義を書き替えた場合は、券面に記載された地価に応じて、地券1枚ごとに以下の証印税を徴収する。
第43条第四十三条 除租地地券新規附与並売買譲渡等ニ付書替及ヒ収租地代替授与水火盗難等ニテ書替ノ節ハ証印税トシテ毎一枚金八厘ヲ取立貸地証書新規附与並書替ノ節ハ手数料トシテ金八厘ヲ取立ヘシ第43条 非課税地の地券を新規発給する場合、また売買・譲渡・課税地の「代替授与」・水害・火災・盗難などによって地券を書き替えたり再発給したりする場合、地券1枚ごとに証印税8厘(0.008円)を徴収する。貸地証書の発給・名義書き替えの際は、手数料として8厘を徴収する。
第五章 地所種類ノ区分及其制限第5章 土地の種別と、それぞれの制限
第44条第四十四条 家屋ヲ建設セル一区ノ地ヲ宅地トシ一区域ヲ為セル田畑ヲ耕地トシ海産製煉貯蔵等ノ為メニ用フル一区ノ地ヲ海産干場トシ其他山林牧場各一区域ヲ為セルモノニ就テ其称呼ヲ定ムヘシ第44条 住宅の建っている区画を「宅地」と呼ぶ。田畑がひとつの区画を形成している場所を「耕地」と呼ぶ。海産物を加工したり貯蔵したりするために使用されているスペースを「海産干場(かいさんかんば)」と呼ぶ。そのほか、山林・牧場がそれぞれ一つの区画を形成している場所を「山林」「牧場」と呼ぶこと。
第45条第四十五条 耕地宅地ハ何人ニ拘ハラス人民各自之ヲ所有セシムヘシ第45条 「耕地」と「宅地」に分類した土地は、だれであれ民間人に所有させること。
第46条第四十六条 牧場ハ各郡村人口ノ多寡ト土地ノ広狭トニ因リ牧畜ニ適スヘキ原野ヲ択ンテ其経界歩数ヲ定メ官有地第三種ニ編入スヘシ第46条 「牧場」に分類した土地は、各郡・各村の人口や土地の規模を考慮しつつ、牧畜業が可能な原野を選んで境界線を引き、面積を決めて「官有地第3種」に編入すること。
第47条第四十七条 官ニ於テ試験ノ牧場ヲ要スルトキハ前条ノ外ニ適宜ノ地ヲ撰ミ其ノ経界歩数ヲ定メテ官有地第二種ニ編入シ人民牧畜営業ノ為メニ要求スル地所ハ其経界歩数ヲ定メテ之ヲ貸渡或ハ私有セシムヘシ第47条 「官」がつくる実験牧場は、第46条の「牧場」(官有地第3種)エリアとは別に、適切な場所を選んで土地面積と境界線を定め、「官有地第2種」に編入すること。牧畜業を希望する民間人には、境界線と面積を決めて土地をレンタル、あるいは私有地として分譲すること。
第48条第四十八条 海産干場ハ海産採取ノ業ヲ営ム者ニ非サレハ之ヲ所有セシムヘカラス但本条ノ地所所有者ノ都合ニ因リ他人ニ貸渡シ営業セシムルハ妨ケナシトス尤モ貸渡ストキハ必ラス其事由ヲ具状セシメ審査ノ上之ヲ許可スヘシ第48条 水産業を営む人以外は、海産干場の土地を所有できない。ただし、海産干場の土地所有者のなんらかの都合で土地を第三者にレンタルして漁業を営むことは禁止しない。(役所は)そのさい、理由書を提出させ、審査してから許可を与えること。
第49条第四十九条 北海道地所規則ニ掲載セル漁浜昆布場ヲ自今改メテ海産干場ト称スヘシ第49条 北海道地所規則にある「漁浜昆布場」は、今後は「海産干場」と呼び方を変更する。
第50条第五十条 海産干場ハ海産営業ノ為メニ所有セシムルモノナレハ営業ノ差等ニ随テ地所坪数ノ制限ヲ定ムヘシ第50条 海産干場は、漁業のために(民間の)土地所有を認めているカテゴリーなので、漁業規模に応じて面積を制限すること。
第51条第五十一条 海産干場ハ一券面ノ地所ヲ分裂シテ之ヲ売貸譲渡スヘカラス第51条 海産干場の地券は、土地を複数に分けて販売・譲渡してはならない。
第52条第五十二条 海産干場ノ海岸地浪打際 満潮ノ時ヲ云 ヨリ五間乃至十五間ハ之ヲ官有地トシ干場所有ノ者ニ貸渡シテ之ヲ所用セシムヘシ但海産営業者ノ都合ニ因リ所有地ヲ他人ヘ貸渡ストキハ該地接続ノ官有地モ改メテ該地借用人ヘ貸渡スヘシ尤本条間数ノ内ヲ道路ノ敷地ニ充ツルコトアルヘシ第52条 海産干場の海岸線、波打ち際(満潮時)から5間~15間(9.1~27.3m)の間の土地は官有地に繰り込み、海産干場の土地所有者にレンタルして利用させること。海産干場の土地所有者がその海産干場を第三者にレンタルする場合、付属する官有地(波打ち際から9.1~27.3mの土地)については、(「官」が)改めてそのレンタル相手にレンタルし直すこと。なお、海産干場の官有地(波打ち際から9.1~27.3mの土地)は、道路用地にする場合がある。
第53条第五十三条 山岳等海浜ヘ突出シ土地狭隘ニシテ前条ニ掲載スル間数ノ外私有セシムヘキ余地無之場所ハ総テ官有地トシテ之ヲ貸渡スヘシ第53条 海岸線まで山が迫っていて土地が狭く、第52条に示した幅以外に私有可能な土地がない場合は、すべて官有地に繰り込んでレンタルすること。
第54条第五十四条 従前該地土着ノ人民ニシテ旧来之ヲ所有シ干場内ニ住居ノ者ニ限リ其制限ニ過ル一割 千坪ニ付百坪ノ割合 以下ノ地所ハ之ヲ所有セシムヘシ第54条 以前からその場所に住んで、ずっとその土地を所有し、干場のエリア内に住居を構えている人に限り、海産干場の面積制限を超えて、10%(例:1000坪につき100坪)までの面積の土地を所有できる。
第55条第五十五条 海産干場坪数ノ制限ハ居屋漁舎倉庫等ノ敷地ヲ合セテ之ヲ算スヘシ第55条 海産干場は、住宅・倉庫など建物の敷地面積も合算して制限面積内にとどめること。
第56条第五十六条 海産干場所有ノ者地所割渡シノ儘営業ニ着手セスシテ売買譲渡スルヲ許サス割渡ノ後一周年間着手セサル者及ヒ着手後中止スル者ハ上地申付ヘシ尤モ甲ニ於テ既ニ着手セル場所ヲ乙ヘ売渡シ乙ニ於テ相当ノ営業ヲ為ササルカ或ハ中止スルモノハ土地売貸規則第三条ニ掲載セル上地地価ノ割ヲ以テ之ヲ買上クヘシ第56条 海産干場の所有者は、土地の割り渡しを受けただけで実際に営業を始めないままでは、その土地を売買・譲渡できない。海産干場の土地割り渡しを受けてから一年たっても営業を始めない人や、いったん始めた営業をやめた人には、その土地の返還を命じること。Aが営業する海産干場を、Bに売却し、Bが営業を縮小・中止した場合は、土地売貸規則第3条に示した価格で(「官」が)買い取ること。
第57条第五十七条 海産干場坪数ノ制限ハ土地ノ形勢ニ因リ之ヲ増減スルコトアルヘシト雖トモ其坪数及ヒ間数大略左ノ如シ尤モ旧来戸口稠密ニシテ此制限ニ循ヒ難キ場所ハ従前ノ慣習ニ依リ之ヲ所有セシムルコトアルヘシ且該地ノ形ヲ変セス鯡場ニ於テ鮭、鮭場ニ於テ鯡其他ノ漁業ヲ営ム等ノ類ハ総テ営業者ノ自由ニ任スヘシ但一区ノ干場ニ於テ網数統船数隻ヲ用ヒテ営業スルモノハ一統或ハ一隻毎ニ制限坪数ノ半ヲ増加シ鯡差網ハ十枚毎ニ其四分ノ一ヲ増加スヘシ第57条 海産干場の面積制限は、地形によって増減するケースもあるだろうが、おおむね以下の面積・間口のようにすること。住宅が建ち並んでいてこの制限通りに設定できない地域では、従来からの慣習に従って住民に土地を所有させることができる。また、エリアを変更せずに「ニシン場」でサケ漁、「サケ場」でニシン漁を行なうなどの営業内容については、すべて営業者の自由に任せること。なお、1カ所の海産干場内で複数の網や船を用いて営業する人に対して、網1カ統あるいは船1隻ごとに制限面積の50%、ニシン漁の刺し網は10枚ごとに制限面積の25%を積み増すこと。
第58条第五十八条 干場坪数ノ制限ハ前条ノ割合ヲ以テ之ヲ定ムト雖トモ奥行浅クシテ其間数制限ニ満チ難キ場所ハ適度ニ随テ表口ノ間数ヲ増シ且奥行ノ間数其制限ニ過ルモ土地ノ形勢ニ因リ他ノ障碍ヲ為サルモノハ之ヲ許スコトアルヘシ第58条 海産干場の面積制限は前条の通りに定めるが、地形によって奥行きが足りず上限に届かない場所は、代わりに幅を広くとってもよい。また地形に応じて、他に支障がないなら、奥行きの上限オーバーを認める場合がある。
地券記載の地価(円)証印税(円)
20.008
1000.015
2000.15
5000.33
10000.5
20000.83
50001.25
第41条「証印税」の区分(現代語訳)
ジャンル面積の制限(㎡)海面表口(m)奥行き(m)
ニシン・イワシ建て網(1カ統)33109136.4
ニシン・イワシ・サケ曳き網(1カ統)4965109.245.5
ニシン刺し網(10枚)66218.236.4
サケ建て網(1カ統)165545.536.4
大房網(1カ統)165545.536.4
昆布刈り船(1隻)1489.545.532.76
第57条 「海産干場の制限」一覧(現代語訳)

先住民族アイヌに対する「同化政策」の多くは、開拓使(1869-1882)が出した「布達(ふたつ)」や「達(たっし)」によって実行されています。そこにはなんと書いてあったのか――?
開拓使が発した法令は、明治政府が『開拓使事業報告』『法令全書』『開拓使布令録』といったインデックスにまとめています。国立国会図書館が運営する検索サイト「日本法令索引〔明治前期編〕」を利用すると、それらインデックスから目当ての法令ページを探して、デジタルスキャン画像を閲覧できます。とはいえ、明治初期の高級役人たちが作った法令は、候文(そうろうぶん)スタイルで書かれていて、現代の私たちには一目ではなかなか理解できません。そこで、冒険的なことは承知の上で、だれにでも読みやすいような現代語訳を試みました。なお法令ID番号は「日本法令索引 明治前期編」に基づいています。(平田剛士)

  • URLをコピーしました!
もくじ