法令ID番号:00801192
明治8年9月30日 開拓使本庁達
https://dajokan.ndl.go.jp/#/detail?lawId=00801192

| 原文 | 現代語訳 | |
|---|---|---|
| ○第四百五拾六(九ノ三拾六号静内拾ノ拾一号浦河番外民事) | 第456号(9-36号=静内あて、10-11号=浦河番外あて) | |
| 九月三十日 静内 浦河出張所 | 1875(明治8)年9月30日 静内・浦河出張所あて | |
| 民事局 | 民事局 | |
| 日高胆振両州方面鹿猟仮規則別紙之通更来十月ヨリ施行候条此旨相達候事 | 別紙のように「胆振日高州方面鹿猟仮規則」を制定し、10月から施行する。このことを通達する。 | |
| (別紙) | (別紙) | |
| 胆振日高州方面鹿猟仮規則 | 胆振日高州方面鹿猟仮規則 | |
| 第1条 | 一 銃猟志願ノ者ハ書式ニ願書ヲ以該地出張所ヘ願出免許ノ鑑札ヲ受クヘキ事但銃猟ハ和洋銃ノ別ナク玉目拾文目以下ノ小銃ニ限ルヘシ且出猟ノ節ハ必ス免許鑑札ヲ所持スヘシ | ●銃猟を希望する人は、定型の書式の通りに願書をつくって地元の出張所に提出し、鑑札を受けとりなさい。使用できる猟銃は、和式銃であれ西洋式銃であれ、弾丸サイズ10文目以下の小銃に限る。また、出猟する時は、免許・鑑札を必ず携帯しなさい。 |
| 第2条 | 一 矢猟〈原文は以下割注〉俗語アマツホート唱ル器械〈割注ここまで〉ノ義ハ深山幽谷等ニ住居スル旧土人人跡隔絶ノ地ニ於テ相用ル分前条同様免許鑑札ヲ受クキ事但右器械ヲ設置有之場所ヘハ必ス遠方ヨリ見分得ヘキ目標ヲ相立置可申事 | ●弓矢猟(アマッポと呼ぶ装置を使った猟)については、森林内や渓谷地域などに住んでいるアイヌ民族が、人のいる地域から遠く離れた場所で行なう場合に限り、第1条に示したのと同じ手続きで免許・鑑札の交付を受けなさい。この装置を仕掛けた場所には、この装置を仕掛けてあると遠くから見分けられるような標識を必ず立てなさい。 |
| 第3条 | 一 免許鑑札ヲ受ルニハ銃猟ハ金二円五拾銭矢猟ハ金一円二拾五銭宛ノ猟税ヲ納ムヘシ | ●免許・鑑札の交付を受けるさい、猟税として、銃猟の場合は現金2円50銭、弓矢猟の場合は現金1円25銭を納めること。 |
| 第4条 | 一 鑑札ハ一己ノ用ト為スヘキモノニシテ借貸売買或ハ譲受等堅ク禁止タルヘキ事 | ●鑑札は本人だけに有効である。鑑札を貸し借りしたり、売買したりすることを固く禁止する。 |
| 第5条 | 一 銃猟矢猟トモ其年十月ヨリ翌年四月迄ヲ一期トス依テ免許鑑札ハ五月五日限リ悉ク返納スヘキ事但土人共食料ノ分ハ其事情ニヨリ一ケ年ノ鑑札可相渡事 | ●銃猟・弓矢猟のいずれの場合も、10月から翌年4月までを狩猟期とする。免許・鑑札は5月5日までに必ず返納しなさい。ただし、アイヌ民族が食料を得るためにシカ猟を行なう場合は、事情を確かめたうえで、免許・鑑札を通年有効と認めること。 |
| 第6条 | 一 左ノ輩ヘハ鑑札ヲ与フヘカラス | ●次のような人には鑑札を交付しない。 |
| 一 十六歳未満ノ幼者 | ①16歳未満の子ども。 | |
| 一 猟銃用方ヲ知ラサル者 | ②猟銃の扱い方を知らない人。 | |
| 一 白痴【風(瘋?)】癲等人事ヲ弁セサル者 | ③精神障害・てんかんなど、「人事を弁せざる」人。 | |
| 第7条 | 一 鑑札所持ノ者タリトモ左ノ場所ニ於テハ銃猟ヲ禁ス | ●鑑札所持者であっても、次のような場所での狩猟は禁止する。 |
| 一 往還筋及ヒ人家ヲ距ル五十間以内 | ①道路や人家から50間(91m)以内の範囲。 | |
| 一 衆人群集ノ場所或ハ銃丸ノ達スヘキ恐レアル距離ノ人或ハ人家ヘ向テ発砲スルヘカラス | ②人が集まっている場所。銃弾が届く危険のある範囲にいる人や人家に向けて発砲してはならない。 | |
| 一 作物植付有之場所 | ③作物が植えてある場所。 | |
| 一 矢猟器械設置有之場所ノ近傍 | ④弓矢猟器械(アマッポ)を設置した場所の近く。 | |
| 第8条 | 一 此規則ヲ犯ス者ハ取糺相当ノ咎メ可申付事 | ●この規則に違反した人には、相当の刑罰を科しなさい。 |
先住民族アイヌに対する「同化政策」の多くは、開拓使(1869-1882)が出した「布達(ふたつ)」や「達(たっし)」によって実行されています。そこにはなんと書いてあったのか――?
開拓使が発した法令は、明治政府が『開拓使事業報告』『法令全書』『開拓使布令録』といったインデックスにまとめています。国立国会図書館が運営する検索サイト「日本法令索引〔明治前期編〕」を利用すると、それらインデックスから目当ての法令ページを探して、デジタルスキャン画像を閲覧できます。とはいえ、明治初期の高級役人たちが作った法令は、候文(そうろうぶん)スタイルで書かれていて、現代の私たちには一目ではなかなか理解できません。そこで、冒険的なことは承知の上で、だれにでも読みやすいような現代語訳を試みました。なお法令ID番号は「日本法令索引 明治前期編」に基づいています。(平田剛士)

