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北海道ウタリ協会 1999年10月 先住民族の権利宣言草案に関する第5回人権委員会作業部会声明

もくじ

北海道ウタリ協会の意見等

議長 発言の機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げます。

日本の先住民族の最大の組織である「北海道ウタリ協会」は、これまで同様、各国の先住民族団体とともに、この権利宣言草案に賛意を表明しており、一切の修正なしに採択されるべきことを望んでいます。

さらに、その権利宣言を規範として我が国におげるアイヌ民族に対する各般の施策がアイヌ民族との話合いの合意を得て、速やかに推進されるべきであると考えており、この立場から咋年の作業部会において日本政府の見解を求めつつ私共の意見を述ベさせていただきました。

今回は、特に「先住民族の用語」を中心に、日本におけるアイヌ民族が置かれている現状等からの意見を述べたいと思います。

1 日本政府は、「先住民(indigenous peoples インディジナス ピープルズではなくindigenous people インディジナス ピープル)の用語の使用を支持し、その定義が草案の中に含まれるぺきである。(E/CN.4/1997/102 No.68.112)」と主張し、さらに決定した用語については「自決の権利あるいは国際法の下でのその用語に付随するその他の権利に関し含蓄をもつものではない。(E/CN.4/1998/106 page.14)」として、自国内の先住民族、すなわちアイヌ民族の集団の権利等に波及しないように腐心していると思われます。

北海道ウタリ協会は、民族としての集団が明確に意識されるために、あくまでも草案どおりの「indigenous peoples インディジナスピープルズ」を定義なしで用いるのが適当であることを改めて表明します。

2 日本政府は、1983年から北海道ウタリ協会がアイヌ民族を先住民族として認め、新たな法律を制定するよう要望を重ねてきたことを受け、1997年5月、アイヌ文化を振興することを主眼とする「アイヌ文化振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の音及及び啓発に関する法律」を制定しました。

この法律は、アイヌ文化の振興等を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図ることを目的としていますが、アイヌ民族を先住民族としては認めず、自立に関する諸施策も法律に盛り込まれませんでした。

しかしながら、この法律は日本における民族に関わる初めての法律として制定され、制定後、2年を経過する取組みの中で、アイヌ民族の経済面の生活向上には何らの変化も見られないものの、アイヌ文化の振興や民族としてのアイデンテイティの高まりなどには、法律の効果が徐々に表れてきています。

また、この法律による普及啓発と1997年の二風谷ダム事件判決(資料参照)におけるアイヌ民族を先住民族と認めた司法判断の定着と相まって、国民的にはアイヌ民族を先住民族と認めることが当然視されています。

さらに、国際的にも1992年12月の国際先住民年開幕式典へのアイヌ民族の出席や1999年4月からアメリカ合衆国スミソニアン博物館においてアイヌ特別展が開催されるなど、アイヌ民族が日本の先住民族であることが明らかに認められています。

このようなことから、日本政府はアイヌ民族を先住民族と認め、アイヌ民族の自立に関する諸施策を早急に実現すべきと考えます。

人権の世紀といわれる21世紀を間近かに控え、日本政府の前向きな対応を求めます。

3 最後に、先住民族の認知に関しての情報をいただきたいと思います。

カナダ連邦共和国のブリティッシュコロンビア州中央海岸のニスガア民族とカナダ政府との土地権利に関する交渉について、私共は多少の情報を得ておりますが、条約を交わしていない場合の先住民族と政府間の交渉の先駆的な事例として、大いに関心を持っております。

その詳しい内容の情報提供を希望しておりますので、関係者からの対応をよろしくお願いします。

どうもありがとうございます。

このページでご紹介しているテキストは、1987年6月から2000年11月にかけて、社団法人北海道ウタリ協会(現・公益社団法人北海道アイヌ協会)が、国際連合の会議に参加して発表した声明、報告、発表・演説の全文です。社団法人ウタリ協会『国際会議資料集』(2001年2月28日発行)を底本としました(明らかな誤植を修正しています)。この資料集には英訳が併記されていますが、ここでは日本語のパートのみ転載しています。(森・川・海のアイヌ先住権研究プロジェクト)

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