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北海道ウタリ協会 1989年8月 先住民の権利に関する基準設定

もくじ

1989年8月3日 ダエス草案に対する基本方針 第二回目の声明

私たちアイヌ民族は、この草案が、いま日本国におかれているアイヌ民族の立場からみて、十分な適用内容と権威を備えていくために、1988年7月の先住民族代表準備会議によって作成された54条項から成る宣言草案によって表明されている先住民族の願望が、「先住民族の権利宣言」に十分反映されることを期待しております。

民族の諸権利。私たちは、日本政府の用いる”people”(ピープル)という言葉は、特に個人の複数形の言葉として「人々」と日本語に訳される場合、欺隔に満ちており、”people”という言葉は、民族の自決権を意味するものであると明確に表明されるべきだと考えます。さらに、私たちは、アイヌ民族の集団としての権利を主張するものであります。

私たちは、日本政府の同化政策に反対してアイヌ民族の復権のための運動を展開してきております。このため、国家は、復権の運動を支援し、履行する義務を負うこと、さらに、国家との条約等の合意をもたない民族が国家との建設的合意を求めていく権利を宣言に盛り込むことを期待します。

第二に、土地と資源であります。北海道その他の領土に居住していたアイヌ民族との間に何の合意もなく日本政府がそれらの領土を収奪した歴史から見て、アイヌ民族は、これらの土地や資源の返還を要求する権利を有すると考えております。また、これらの資源を基礎とした、狩猟、漁撈、採集などの経済的権利も有しております。

このような権利が、先住民族代表準備会議の意見に見られる考え方に沿って宣言中に収められることを望むものであり、そのような宣言は、日本におけるアイヌ民族の復権に大きく役立つものと信じております。

第三に、私たちは、民族の存立のためには、民族固有の言語を保持することが極めて大切であると考えております。このため、民族固有の言語を維持し、使用し、発展させる権利を盛り込むことが必要であると考え、修正宣言草案の第9条にこの権利が収められていることを十分に評価いたします。

さて、議長、第6項目でもう一度発言を行う代わりに、「先住民のための国連任意基金」および「先住民族のための国連年」に関して少し述べ(させて戴い)てよろしいでしょうか。

まず、国連任意基金について。ここでの過程を促進するには参加が非常に重要であります。私たちは、乏しい資金によって、この作業部会会議に出席するためにやってきておりますが、世界各地の先住民族の中には、そのような資金がなく、そのため自国における迫害と窮状を国連の場において正しく報告するための代表を送ることも出来ない方々がおられることもまた承知しております。

今年の作業部会に37人の先住民が参加可能になったことを知り、大変うれしく思っております。このような民族のために基金に資金を拠出されている各国政府とNGOに対し、賞賛と敬意を表させて戴きたいと思います。同時に、もっと多くの先住民族代表が国連の過程に参加できるように、もっと多くの政府が資金の拠出に加わることを望むものであります。私たちは、先住民族が求めているものに対して国際社会がその理解を深め、支援を強化できるように、日本政府に対して、基金に資金を援助されるよう要請し続けていきたいと考えております。

参加の問題と関連しまして、小委貝会の日本からの卓越した委員が、今年3月に発表した雑誌論文において、この国連の過程における私たちの参加の気持ちを挫く発言を行ったことに対し大変遺憾に思っていることを作業部会に報告し、また記録に留めたいと思います。

第二に、1992年の「先住民族のための年」の提案が失敗し、1993年でさえ各国政府から支持を得ていないということに大変失望しております。国際連合がその長期的目標―「諸民族の非植民地化」―の実現に成功するには、世界的な意識の覚醒が要求されます。実際のところ、近代国家によって実行された何世紀にもおよぶ植民地主義の影響を真に逆流させるには、10年でさえ十分でないかもしれません。高水準の意識が世界的に緊急に必要な時に、また私たちが「先住民族の権利に関する世界宣言」に近づきつつある時に、私たちは、明らかに、少なくとも「先住民族年」に向けて邁進する必要があります。私たちは、各国政府がこの問題に関する立場を再考するよう求めます。

どうもありがとうございました。

このページでご紹介しているテキストは、1987年6月から2000年11月にかけて、社団法人北海道ウタリ協会(現・公益社団法人北海道アイヌ協会)が、国際連合の会議に参加して発表した声明、報告、発表・演説の全文です。社団法人ウタリ協会『国際会議資料集』(2001年2月28日発行)を底本としました(明らかな誤植を修正しています)。この資料集には英訳が併記されていますが、ここでは日本語のパートのみ転載しています。(森・川・海のアイヌ先住権研究プロジェクト)

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