12/1(日)ドキュメンタリー上映会&トーク「カムイチェプ サケ漁と先住権」

オホーツクの海・川・森から先住権回復をめざす 畠山敏エカシ(紋別アイヌ協会会長)インタビュー

もくじ

3 紋別の森と開発

木質バイオマス発電所

紋別に住友(住友林業株式会社と住友共同電力株式会社の出資)の木質バイオマス発電所ができたんです(2016年12月に営業運転を開始)。この間、旭川で研究者の話を聞きましたが、紋別の発電所で1日600トンの原木を焚く。

山から木を切り出して使っているけど、興部から内陸のほうにいくとブドウの蔓を切断してるんです。なぜこういうことをしているかというと、上の木が蔓でからまっておがれないんだってね。だから、熊が出る、熊が出るって札幌あたりでもだいぶ騒いでいるけど、熊を呼びよせているのはお前たちじゃないのかといいたい。熊や鹿、鳥をね、自然の生き物を守ってやるのが人間の務めではないかと思うんだけど、人間の都合でお金を生むことだけを考えるのではなくて、自然と共生していくという考え方が大切ではないかと思うんだよね。だけど、今の日本は違うものね。

森の木を伐採するために、(幅)8mから12mぐらいの道路を山のてっぺんまでつけている。表土の黒土をブルドーザーで押しはがして、粘土地がむき出しになる。粘土から出る水は酸性になる。そういう具合にどんどん山を荒らして、1日600トンも丸太を焚いている。この木質バイオマス発電には、当初から疑問が多々あったんだが、紋別の市長から浜の連中まで、みんな産業誘致ということで紋別に持ってきたんだよ。

紋別バイオマス発電所。2018年2月13日、平田剛士撮影。
紋別バイオマス発電所に運び込まれる丸太。2018年2月13日、平田剛士撮影。

森林認証と先住民族の権利

この木質バイオマス発電以外にも、紋別の森からは東京オリンピック(2020年予定、コロナ禍により2021年に延期)で使う国立競技場の建設用木材も調達されている。紋別市の森の多くは、SGEC(エスジェック、一般社団法人緑の循環認証会議)という森林認証を取得していて、紋別市は「森林認証の森」をアピールしている。オリンピックで使う木材の調達では、持続可能性への配慮が条件とされていて、SGEC認証を受けていることが紋別から木材を調達する根拠になっているんです。

SGECは元々は国内のみの認証制度で、先住民族の権利尊重という条件がなかったのだけど、2016年に国際認証制度である「PEFC」(Programme for the Endorsement of Forest Certification、森林認証制度相互承認プログラム)とタイアップしたことで先住民族の権利尊重が基準に加わった。でも、オリンピックの木材調達に関しても、バイオマス発電の木材使用に関しても、紋別アイヌ協会との話し合いやちゃんとした情報提供はまったくされていないね。

メモ 国際森林認証制度

「従来の利潤追求・収奪型から、環境・経済・社会配慮型の資源開発への転換」を旗印に、独立した審査団体が諸条件をクリアした林業者や製品にお墨つき(認証)を与える仕組み。合格品はエコラベルを張って他の商品と差別化できます。先住民族の権利に関する国連宣言(2007)採択を受けて、国際審査団体のうちFSC(Forest stewardship council、本部はドイツ。日本語名「森林管理協議会」)がいちはやく「先住民族の諸権利遵守」を認証条件につけ加え、PEFC(本部・スイス)も追随しました。PEFCとタイアップする日本のSGECは2020年、「アイヌ民族に対するFPIC実施の手引(ガイド)」を策定しましたが、紋別地方の森林について、紋別アイヌ協会との間でFPIC(Free, Prior and Informed consent、自由で、事前の、十分な情報にもとづく同意)は成り立っていない、というのが、このインタビュー時点での畠山敏会長の指摘です。(平田剛士)

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