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現代語訳・鹿猟規則改定(1878年)

法令ID番号:01608394
明治11年6月29日  開拓使乙第20号布達
https://dajokan.ndl.go.jp/#/detail?lawId=01608394

https://www.digital.archives.go.jp/item/1302726.html
原文現代語訳
六月廿九日1878(明治11)年6月29日
鹿猟規則改定鹿猟規則改定
開拓使上申開拓使からの上申
明治九年十一月乙第百六号ヲ以テ及上申置候当使管内鹿猟規則別紙ノ通改定候条此段上申候也 六月二十九日1876(明治9)年11月、開拓使から上申した乙第106号「開拓使鹿猟規則」を別紙のように改定しました。以上を上申します。6月29日
開拓使布達開拓使布達
乙第二十号乙第20号
明治九年十一月乙第十一号布達当使管内鹿猟規則別紙ノ通改定候条此旨布達候事 六月廿九日1876(明治9)年11月の布達・乙第11号「開拓使管内鹿猟規則」を別紙のように改定しました。このことを布達してください。6月29日
北海道鹿猟規則北海道鹿猟規則
鹿ハ北海道物産ノ一ニシテ其利タル少シトセス然ルニ従来猟法制限ナキニ因テ妄猟濫殺繁殖ノ法ヲ欠クノミナラス自然其種ヲ減シ其聲價ヲ落シ人民モ又遂ニ其利ヲ失フニ至ラントス故ニ之ヲ保護シ永ク其利ヲ失ハザラシメンガ為メ茲ニ規則ヲ設クルヿ左ノ如シシカは、北海道産の自然資源であり、資源としての価値は低くない。しかしこれまで狩猟規制がなかったために野放図な狩猟が行なわれ、乱獲が起き、〈シカを〉繁殖させる手段を欠いていただけでなく、シカが減り、評判も落ち、住民たちにとっても、その利益を失ってしまいかねない状況である。そこでシカを保護し、この先も長く利益を失わないようにするため、ここに以下の規則を制定する。
第一条第1条
免許鑑札ナクシテ鹿猟ヲナスハ自今之ヲ禁ス無免許でシカを狩猟することを、これからは禁止する。
第二条第2条
鹿猟志願ノ者ハ左ノ書式ニ照準シ地方庁〈原文は以下割注〉札幌本庁及ヒ函館根室両支庁ヲ云フ以下之ニ倣フ〈割注ここまで〉ヘ願書差出シ免許鑑札ヲ受クヘシシカの狩猟を希望する人は、以下に掲げるフォーマットに従って申請書類を作成し、地方庁(札幌本庁、函館支庁、根室支庁のこと。以下同じ)に提出して、免許・鑑札を受けなさい。
第三条第3条
鑑札ヲ受クルニハ一枚ニ付金二円五拾銭ツ丶ノ猟業税ヲ納ムヘシ但旧蝦夷人ニ限リ当分納税ニ及ハス鑑札を受けとる際には、鑑札一枚につき2円50銭ずつの狩猟税を納付しなさい。なお、アイヌ民族に限っては、当面の間、免税とする。
第四条第4条
猟者ノ員ハ札幌本庁管内職猟五百名遊猟三十名函館支庁管内職猟百名遊猟十名根室支庁管内職猟百三十名〈原文は以下割注〉内百名夏猟三十名冬猟〈割注ここまで〉遊猟十名〈原文は以下割注〉内五名夏猟五名冬猟〈割注ここまで〉ト定メ満員ノ後願出ル者ヘハ鑑札ヲ与エス狩猟者の定員を次のように設定する(下の表)。出願者数がこの定員に達したら、その後の出願者には鑑札は発給しない。
職猟免許定員遊猟免許定員
札幌本庁管内500人30人
函館支庁管内100人10人
根室支庁管内130人(夏猟100人、冬猟30人)10人(夏猟5人、冬猟5人)
第五条第5条
免許鑑札ヲ受ケタル者ト雖モ毒矢ヲ以テ猟殺スルヲ禁ス免許鑑札を受けた人であっても、毒矢を使用してシカを捕殺してはならない
第六条第6条
鑑札ハ一期限ノミ効アリトス但一巳ノ用トナスベキモノニシテ貸借売買譲受スルヲ禁ス鑑札の有効期限は1シーズンとする。鑑札は特定の個人に発給されるものなので、貸したり借りたり、売ったり買ったり、譲り受けたりしてはならない。
第七条第7条
猟業ハ根室国一円並北見国ノ内網走紋別常呂斜里ノ四郡ハ五月一日ヨリ十月卅一日マテソノ他ハ九月一日ヨリ翌年二月二十八日〈原文は以下割注〉閏年ハ廿九日〈割注ここまで〉マテヲ一期限トシ右期限ノ外ハ出猟ヲ禁ス但免許鑑札ハ毎年三月五日限リ最初受取タル地方庁ヘ返納スヘシシカの狩猟期間を次のように設定する(下の表)。これ以外の期間は出猟してはならない。免許・鑑札は、毎年3月5日までに、最初にその免許・鑑札の交付を受けた地方庁に返納すること。
エリア猟期
根室国/北見国のうち網走郡・紋別郡・常呂郡・斜里郡5月1日~10月31日
それ以外の地方9月1日~2月28日(閏年は29日)
第八条第8条
鑑札ヲ与フヘカラザルモノ及ヒ銃猟規制ノ場所ハ鳥獣猟規則第七条同第八条ノ通タルヘシ鑑札の交付を受ける資格のない人、また銃猟規制区域については、鳥獣猟規則第7~8条に示される通り。
第九条第9条
此規則ヲ犯ス者ノ罰則等ハ総テ鳥獣猟規則第十四条ヨリ第十七条マデノ通タルヘシこの規則に違反した人に科す罰則などについては、すべて鳥獣猟規則第14~17条に示される通り。

先住民族アイヌに対する「同化政策」の多くは、開拓使(1869-1882)が出した「布達(ふたつ)」や「達(たっし)」によって実行されています。そこにはなんと書いてあったのか――?
開拓使が発した法令は、明治政府が『開拓使事業報告』『法令全書』『開拓使布令録』といったインデックスにまとめています。国立国会図書館が運営する検索サイト「日本法令索引〔明治前期編〕」を利用すると、それらインデックスから目当ての法令ページを探して、デジタルスキャン画像を閲覧できます。とはいえ、明治初期の高級役人たちが作った法令は、候文(そうろうぶん)スタイルで書かれていて、現代の私たちには一目ではなかなか理解できません。そこで、冒険的なことは承知の上で、だれにでも読みやすいような現代語訳を試みました。なお法令ID番号は「日本法令索引 明治前期編」に基づいています。(平田剛士)

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