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現代語訳・鳥獣猟免許取締規則(1873年)

明治6年1月20日  太政官第25号(布)
法令ID番号:00006367
https://dajokan.ndl.go.jp/#/detail?lawId=00006367

『法令全書』明治6年,内閣官報局,明20-45. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/787953
原文現代語訳
第二十五号(一月二十日)(布)1873(明治6)年1月20日 第25号(布)
鳥獣猟免許取締規則等別紙ノ通被定候ニ付管内無遺漏触示シ願出候者有之候者ハ身元並近傍故障有無相糾差支無之ハ規則ニ照準鳥獣猟免許鑑札相渡屹度取締可相立事但従前ノ猟銃税ヲ相廃シ第二十八号布告ノ銃砲取締規則第六条ハ此規則ニ引換候事鳥獣猟の免許・取締のための規則などを別紙の通り制定したので、各管内の(関係部署に)もれなく伝えなさい。(免許の)申請者に対しては、身元を確かめ、近所にも問い合わせて、(免許を与えても)差し支えないかどうかを審査して、この規則のとおりに鳥獣猟免許と鑑札を渡して厳密に管理しなさい。なお、これまでの「猟銃税」は廃止する。また第28号布告の「銃砲取締規則」第6条は、この規則に置き換えること。
一 従来鳥獣猟差許来候地所ノ字地名共取調七月迄大蔵省ヘ届出銃猟ノ分ハ陸軍省ヘモ可届出事
但従来許来候地所ニテモ人民障碍相成候場所ハ更ニ禁止ノ見込取調本文同様可申立事
●これまで狩猟を許可してきたエリアの地名を(今年=1873年)7月までに調査し、結果を大蔵省に提出しなさい。銃を使った狩猟を許可してきたエリアの地名については、陸軍省にも情報を提供しなさい。なお、これまで狩猟を許可してきたエリアであっても、住民に影響を与えそうな場所については、調査のうえ、新たに禁猟区に設定する予定が立てば、同じようにその情報を提供すること。
一 鳥獣猟免許ノ者ハ新古ニ拘ラス名面取調毎年十二月迄大蔵省ヘ届出銃猟ノ分ハ陸軍省ヘモ可届出事●鳥獣猟免許の取得者に対して、新規取得者か継続取得者かを問わず、毎年、面接調査をして、その結果を毎年12月までに大蔵省に報告しなさい。このうち銃猟者の情報は陸軍省にも報告しなさい。
一 鑑札免許税ハ収入ノ度毎大蔵省ヘ相納一ケ年分一人別帳ヲ製シ毎年十二月限リ同省ヘ差出右総計ハ雑税帳ヘ組入歳入皆済帳ヲ以成算可致事●鑑札免許税は、徴収するたびに大蔵省に納めなさい。免許取得者ひとりずつ、毎年1枚の(納税)書類を作成し、毎年12月までに大蔵省に提出すること。全員分をまとめて(納税)総額を「雑税帳」に組み込み、「歳入皆済帳」で計算できるようにしておくこと。
一 新規免許鑑札願出候者ハ時間ノ遅速ニ拘ラス税金ハ一ケ年ノ本額可為納事●新規の免許取得者には、取得時期の早い・遅いにかかわらず、一律に1年分の税額を納付させること。
一 過料金ハ一ケ年ニ括リ明細仕訳書ヲ以テ司法省ヘ可差出事●〈規則違反者から徴収した〉過料金は、1年ごとにまとめて、明細を記録した仕訳書を添えて、司法省に提出しなさい。
一 鑑札雛形ノ通相心得焼印並割印ノ儀ハ在来相用為見本一枚大蔵省ヘ可差出事●鑑札は、添付したフォーマットのとおりに作成すること。焼印・割印を押したもう一枚は、【在来相用為見本】保管用として(?)大蔵省に提出しなさい。
一 従前免許鑑札ヲ渡置モノ此規則ニ従ヒ鑑札改渡税金上納済ミノ分ハ下戻更ニ本額ノ税金可為致上納事●すでに免許・鑑札を発給ずみの人には、この規則に基づく新しい免許・鑑札を改めて発給すること。その場合、納入済みの税金はいったん払い戻してから、改めて1年分の税額を納付させること。
右之通候事以上のことを伝えます。
原文現代語訳
(別紙)鳥獣猟規則(別紙)鳥獣猟規則
第1条第一条 銃砲ヲ用テ鳥獣ヲ猟シ以テ生活トスル者ヲ職猟トシ遊楽ノタメニスルヲ遊猟トス生業のための銃器をつかった狩猟(銃猟)を「職猟」、リクリエーションのための銃猟を「遊猟」と呼ぶ。
第2条第二条 銃猟ノ事自今免許鑑札ナキモノ一切禁止シ有害ノ鳥獣ヲ威シ或ハ殺スヿハ地方官ノ便宜ニヨリ臨時ノ免許ヲ与フヘシ今後は、免許を受けず、鑑札を持っていない人は、銃猟をいっさい禁止する。ただし、「有害鳥獣」を遠ざけたり捕殺するために必要な銃猟については、(現地の)「地方官」の判断で臨時免許を発給する。
第3条第三条 職猟遊猟トモ必ス願書ニ名住所身分年齢ヲ記シ地方官庁ヘ願出免許鑑札ヲ受ケ出猟ノ節ハ必ス之ヲ所持スヘシ職猟・遊猟を問わず、希望者は出願書類に名前・住所・「身分」・年齢を明記し、もよりの地方官庁に出願のうえ、免許証と鑑札を受け取ること。狩猟の際には必ずこれら免許証と鑑札を携帯すること。
第4条第四条 猟鑑札ハ一人一己ノ用トナスヘクシテ只一ケ年ノミ効アリトス鑑札は一人ずつ発行し、有効期限は1年とする。
第5条第五条 鑑札ヲ渡スニハ職猟ニハ一円遊猟ニハ十円ツ丶ノ税ヲ納ムヘシ鑑札を受け取る際に、職猟者は1円、遊猟者は10円の税金を納付すること。
第6条第六条 鑑札ハ各地方庁ニテ別紙雛形ノ通製造シ相与ヘ尚翌年モ願出ルモノハ最前ノ手続ヲ用ユヘシ鑑札は、各地方庁が別紙フォーマットのとおりに作成し、免許取得者に発給する。翌年も免許の更新を希望する人は、前年までの書類をそのまま継続しなさい。
第7条第七条 鑑札ハ貸借或ハ売買スルヿヲ禁ス鑑札を他人と貸し借りしたり、売買したりしてはならない。
第8条第八条 鑑札ヲ遺失スル者及遺失セル鑑札ヲ拾ヒ得ル者ハ直ニ管庁ヘ届出ツヘシ但其遺失セシ者ハ印鑑遺失例ニ照スヘシ鑑札をなくしてしまった人、まただれか他人の鑑札を拾った人は、すぐに役所に届け出ること。鑑札をなくした人は、「印鑑遺失例」に示したとおりにしなさい。
第9条第九条 左ノ輩ヘハ鑑札ヲ与フヘカラス次のような人には、鑑札を発給してはならない。
一 十六歳以下ノ幼者①16歳以下の子ども。
一 猟銃用ヒ方ヲ知ラサル者②猟銃の扱い方を知らない人。
一 白痴風【顚?】【瘋癲?】人事ヲ弁セサル者③精神障害・てんかんなど、「人事を弁せざる」人。
一 故ナク弓箭銃砲ヲ放ツノ刑ヲ受ケシ者④理由なしに弓矢を放ったり発砲したりして刑罰を受けたことのある人。
一 山林田野川沢等ノ監守者⑤森林・農地・原野・河川などの監守人。
一 猟事ニ関スル諸規則ヲ犯シ前刑ノ言渡ヲ謹守セサルモノ⑥狩猟に関するルールを破ったために命じられた罰則に応じていない人。
第10条第十条 左ノ場所ニハ銃猟スヘカラス次の場所では銃猟は禁止する。
一 人家稠密ノ地①人家が密集しているところ。
一 人家アル所及人ノ往来作業スル所都テ銃丸ノ迸リテ人ヲ害スルノ恐レアル所②人家のあるところ。人が行き来したり、作業をしているところ。流れ弾が人に被害を与える可能性がある場所。
一 禁猟制札ノ場所③禁猟区。
一 他人ノ住居或ハ構内④他人の家の敷地や構内
第11条第十一条 猟銃ハ和銃四匁八分玉以下ノ小筒並西洋猟銃等併セ用ユ可シ軍用ノ小銃ニテ鳥獣ヲ猟スルヲ禁ス但猟銃ヲ所持スル者銃砲取締規則ニ照準スヘキ事銃猟に使用可能な銃器は、和銃(弾丸サイズは4匁8分以下の「小筒」)もしくは「西洋猟銃」とする。軍事用の小銃は狩猟で使用してはならない。なお、猟銃所持者は「銃砲取締規則」を遵守すること。
第12条第十二条 猟ヲ禁スル地ニ非スト雖モ田畑植物ヲ踏荒シ且樹木ヲ毀損スルヿヲ厳禁トス禁猟区以外でも、狩猟中に田畑で作物を踏み荒らしたり、林内で樹木を傷つけたりすることは厳禁する。
第13条第十三条 銃猟期限ハ十二月一日ヨリ三月中ヲ限リトス右時限ノ外ハ出猟ヲ禁ス但銃猟期限ハ地方ノ模様ニヨリ其見込ヲ以テ此期限ヲ伸縮シ山間等人家ニ遠隔ノ地ハ其期限ヲ定メサルヿモアルヘシ銃猟のシーズンは毎年12月1日~翌年3月いっぱいとする。これ以外の時期に出猟してはならない。ただし、各地それぞれの事情に応じて、あらかじめ可猟期間を伸ばしたり縮めたりしてもよい。山間部など人家から遠く離れている場所では、猟期を設定しない選択肢もありうる。
第14条第十四条 戸長邏卒地主山林田畑川沢等ノ監守者銃猟者所持ノ鑑札ヲ検査スルノ権アルヘシ若シ検査スルヿヲ否マハ無鑑札ノモノト見做スヘシ而シテ此諸規則ヲ犯スモノハ右ノ輩申立ニ拠リ其罪ヲ論ス猶決シ難キ時ハ証人ヲ以テ証スヘシ戸長、邏卒(巡査)、地権者、また森林や農地の監視人には、(現場で)ハンターが鑑札を持っているかどうかをチェックする権限を与える。そのハンターがもしチェックを拒んだ場合は、無鑑札者とみな(して対処)しなさい。違反者の罪(の軽重)は、戸長、邏卒(巡査)、地権者、また森林や農地の監視人の申告に基づいて判断すること。もし判断がつかない場合は証人を呼んで判断すること。
第15条第十五条 犯人アリト雖モ之ヲ即時ニ捕ヘ又ハ其猟具ヲ直ニ取上クルニ及ハス犯人ノ鑑札ヲ所持スルモノ其番号姓名等ヲ取調申立ヘシ若シ鑑札ナキモノハ其姓名住所ヲ聞糾其犯人ニ同行シテ其本宅ヲ認ムヘシ若犯人其面ヲ隠シ又其姓名ヲ告ゲ肯セス且其住所本宅知レサル時ハ最寄ノ役所ニ伴ヒ其身上ヲ聞糺スヘシ規則に違反した者(「犯人」)をすぐに逮捕したり、道具を没収したりする必要はない。鑑札所持者であれば鑑札の登録ナンバーと名前などを記録し、無鑑札者の場合は名前と現住所を記録した上で自宅まで同行して(真偽を)確認すること。そのさい、もし顔や名前を隠したり、(案内先が)現住所ではなかった時は、最寄りの役所に連行して取り調べること。
第16条第十六条 此諸規則ヲ犯スモノハ所在裁判所及地方官庁ニテ罪及罰金ノ言渡ヲ受クヘシこの規則の違反者は、所在地の裁判所、もしくは地方官庁に出頭して、決定した罪状や罰金額を聞きなさい。
第17条第十七条 銃猟セシ者ノ為メ其官庁ヘ出訴スル時ハ右出訴ニ属スル入費其不理ナリト裁判ヲ受クルモノヨリ出サシムルヿ一般ノ公布面通リタルヘシ銃猟者の(違反や被害を告発する?)ために官庁に訴え出るさいの経費は、その【不理ナリト】裁判を受けることになる被告に負担させることができる。【一般ノ公布面通リタルヘシ】。
第18条第十八条 凡テ再犯以上ノ罰金ハ倍シテ取ルヘシ但罪ヲ犯シタル時ヨリ十二月内ニ諸規則ヲ犯スモノヲ再犯トス再犯の場合、課徴する罰金額は、すべて2倍にする。「再犯」とは、初犯から12カ月以内に再び罪を重ねた場合をいう。
第19条第十九条 此諸規則ヲ犯スニ詐訛脅迫ノ挙動アル者ハ本律ニ因リ従重科断ス規則違反(の指摘)に対し、言い逃れをしたり脅迫したりする態度を取ったら、この法令に基づいて罪が重くなる。
第20条第二十条 若シ無力ニシテ罰金ヲ出スヿ能ハサル者懲役法ニ依ルヘシ(規則違反者のうち)お金がなくて罰金を支払えない場合は、「懲役法」に従うこと。
第21条第二十一条 此諸規則ヲ犯スニ由リ他人ニ損害ヲ蒙ラシムル者ハ之ヲ償フ可シこの規則に違反して他人に損害を与えた場合は、賠償しなければならない。
第22条第二十二条 何ノ罪ヲ問ワス此諸規則ヲ犯スモノ銃器ヲ取揚ケ本罪ヲ科シ及免許ヲ得スシテ猟ス者ハ職猟遊猟ヲ問ハス銃器ヲ取上ケ罰金六円ヲ科スこの規則に違反した人は、どのような違反を犯したかにかかわらず、銃器を没収し、刑罰を科す。職猟であれ遊猟であれ、無免許で狩猟した人は、銃器を没収し、罰金6円を科す。
第23条第二十三条 此諸規則ヲ犯シテ獲タル鳥獣ハ之ヲ取上クヘシこの規則に違反して捕獲した獲物は、没収する。
第24条第二十四条 鳥獣ノ死シ或ハ落酔スヘキ餌或ハ薬品ヲ用井テ猟スルヿヲ禁ス野生動物を殺してしまう薬品、麻痺させて動けなくする薬品を狩猟に使用してはならない。
第25条第二十五条 総テ犯禁ノモノヲ他ヨリ證跡ヲ取リ訴出ル時ハ犯人罰金ノ半ヲ賞誉トシテ賜フヘシ証拠をそろえて規則違反者を通報した人には、(役所は)罰金の半額の報奨金を授与すること。
免許鑑札雛形(略)免許鑑札のフォーマット(略)
罪名職猟罰金遊猟罰金
免許ヲ得テ鑑札ヲ持サル者二拾銭一円
他人ノ遺失セル鑑札ヲ以テ猟スル者二円拾二円
禁猟制札ノ場所ニ於テ猟スル者一円四拾銭六円
猟ヲ禁スル地ニ於テ猟スル者一円四拾銭六円
猟ヲ禁スル時限中猟スル者二円拾二円
鑑札ヲ貸シ或ハ之ヲ売ル者二円拾二円
鑑札ヲ借リ或ハ之ヲ買フ者一円四拾銭六円
鳥獣ノ死シ或ハ落酔ス可キ餌等ヲ以テ猟スル者二円拾二円
原文
罪名職猟者の罰金(円)遊猟者の罰金(円)
鑑札の不携帯0.21
第三者が紛失した鑑札を使用した場合212
禁猟区での密猟1.46
猟が禁じられている場所での密猟1.46
禁猟期の密猟212
鑑札を第三者に貸したり売ったりした場合212
第三者からの鑑札を借りたり買ったりした場合1.46
動物を殺したり麻痺させたりする餌などを使用して狩猟した場合212
現代語訳

先住民族アイヌに対する「同化政策」の多くは、開拓使(1869-1882)が出した「布達(ふたつ)」や「達(たっし)」によって実行されています。そこにはなんと書いてあったのか――?
開拓使が発した法令は、明治政府が『開拓使事業報告』『法令全書』『開拓使布令録』といったインデックスにまとめています。国立国会図書館が運営する検索サイト「日本法令索引〔明治前期編〕」を利用すると、それらインデックスから目当ての法令ページを探して、デジタルスキャン画像を閲覧できます。とはいえ、明治初期の高級役人たちが作った法令は、候文(そうろうぶん)スタイルで書かれていて、現代の私たちには一目ではなかなか理解できません。そこで、冒険的なことは承知の上で、だれにでも読みやすいような現代語訳を試みました。なお法令ID番号は「日本法令索引 明治前期編」に基づいています。(平田剛士)

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