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現代語訳・旧土人耳環及入墨ヲ禁ス(1876年)

開拓使布令録編輯課 [編纂]『開拓使布令録』明治9年[下],[開拓使],1880印刷. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/995339

法令ID番号:00801595 明治9年10月2日 旧土人耳環及入墨ヲ禁ス
https://dajokan.ndl.go.jp/#/detail?lawId=00801595

原文現代語訳
○丙第百九拾三号 十月二日 (札幌)市中区戸長丙第193号 明治9(1876)年10月2日
開拓使から札幌区戸長への通達
旧樺太土人従来ノ風習ヲ洗除シ教化ヲ興シ漸次人タルノ道ニ入ラシメ往々智工ヲ開キ物理ニ通シ事務ヲ知ラシメ均シク開明ノ民タラシメン為メ既ニ誘導ヲ加候処未タ其固態ヲ固守シ風習ヲ不改不都合ノ次第ニ候就中男子ノ耳環ヲ着ケ出生ノ女子入墨致等堅ク不相成旨父母タル者ハ勿論夫々篤ク教諭ヲ尽シ且自今出生ノ者ハ尚更厳密検査遂ニ此行ヲ改メ候様予防方法相立取締可致而シテ自今万一犯禁ノ者検出候ハ丶不得止事律ニ照シ処分可及筈ニ付時々詳細具状可致ハ勿論予テ能ク此ノ懲罰アルヲ戒メ置クベシ此旨相達候事〈「官」は〉これまで、旧カラフト「土人」(アイヌ)から従来の風習を洗い除き、教育をほどこし、少しずつ「人になるための道」に入らせ、ゆくゆくは智恵や工夫をこらし、ものの道理をわきまえ、なすべきことを自覚し、みんな一様に「開明の国民」にするために、「誘導」を進めてきたところである。
にもかかわらず、〈カラフトアイヌたちは〉いまだにその「固態」を頑固に守って、風習を改めておらず、都合が悪い。
とりわけ、男の子がイヤリングをつけたり、生まれてきた女の子に入れ墨をいれるといったことは厳禁だと、両親はもとより本人たちにも繰り返し教えさとさなければならない。これから生まれてくる子どもたちに対しては、なおさら厳密に検査をして、この風俗をやめるように、予防的な取り締まりを行なうこと。
万が一、違反者が出た場合は、やむをえず、規則に照らして、厳重な処分を下すことになる。「違反者は罰せられる」ということも含め、この命令の詳しい中身を具体的に言い聞かせておくこと。

先住民族アイヌに対する「同化政策」の多くは、開拓使(1869-1882)が出した「布達(ふたつ)」や「達(たっし)」によって実行されています。そこにはなんと書いてあったのか――?
開拓使が発した法令は、明治政府が『開拓使事業報告』『法令全書』『開拓使布令録』といったインデックスにまとめています。国立国会図書館が運営する検索サイト「日本法令索引〔明治前期編〕」を利用すると、それらインデックスから目当ての法令ページを探して、デジタルスキャン画像を閲覧できます。とはいえ、明治初期の高級役人たちが作った法令は、候文(そうろうぶん)スタイルで書かれていて、現代の私たちには一目ではなかなか理解できません。そこで、冒険的なことは承知の上で、だれにでも読みやすいような現代語訳を試みました。なお法令ID番号は「日本法令索引 明治前期編」に基づいています。(平田剛士)

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