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国連ビジネスと人権の作業部会「訪日調査最終報告書」(2024年)から

国連・人権理事会に属する「ビジネスと人権の作業部会」は2024年8月1日、作業部会の専門家チームが前年夏に実施した訪日調査の最終報告書(文書番号A/HRC/56/55/Add.1 )を同理事会に提出しました。

「ヒューマンライツ・ナウ」と「ビジネスと人権リソースセンター」による日本語訳(仮訳)から、「先住民族」「アイヌ」にかかわるパートを以下に引用します。段落前の数字は段落番号です。(平田剛士)

引用元
国際連合人権理事会 https://docs.un.org/en/A/HRC/56/55/Add.1
ヒューマンライツ・ナウ(日本語仮訳) https://hrn.or.jp/news/25958/
2025/09/16閲覧

もくじ

抜粋1 リスクにさらされている集団

28 このセクションでは、女性、LGBTQI+、障害者、先住民族、被差別部落出身者を含むマイノリティ・グループ、子どもや高齢者に焦点を当てているものの、これが日本においてリスクにさらされているグループの網羅的なリストではないことは強調しておくべきことです。作業部会は、一例として、セックスワーカーの搾取やホームレスに対する差別などの問題についても、報告を得ています。

29 リスクにさらされているグループが直面する課題の核心は、一方で労働市場におけるダイバーシティとインクルージョンの欠如であり、他方では職場や社会全般における差別、ハラスメント及び暴力の蔓延です。実際、雇用機会、公正な賃金及び生計を立てるための所得を得る能力において、これらのグループに継続的な格差があることは、構造的不平等、職場での差別、そして貧困や社会的排除を含む、関連する問題と密接に結びついています⁠1。民族、人種、年齢、性別及び性的指向などの個人的属性は、個人の雇用機会や職務能力に偏見をもたらすものであってはならないものの、現実においてはしばしばそのような状況があります⁠2先住民族、少数民族、移住労働者、女性の多くは、低賃金で非正規の仕事に従事しており、一般的に他の人々よりも賃金が低くなっています。不平等は、インクルージョンを確保すべきという道徳的な要請にとどまらず、経済的、政治的損害をもたらしうるものです⁠3。2030アジェンダで約束されたように、持続可能な開発を達成し、「誰一人取り残さない」ためには、最も取り残されることが多い、リスクにさらされている人々にまず手を差し出すことをはじめ、インクルージョンと社会正義を推進する日本政府の政策と企業の活動が重要となってきます⁠4

(略)

マイノリティ・グループ及び先住民族

40 アイヌの人々を先住民族として認識し、2019年に「アイヌ施策推進法(アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律)」が成立したことは、アイヌ民族の権利の認識に向けた前向きな動きです。もっとも、アイヌの人々による自らの先住民族としてのアイデンティティの定義を前提としたアイヌの人口調査は行われていないため、差別が可視化されたり、語られたりすることはなく、アイヌの人々は今でも、教育や職場で差別を受けています。

41 作業部会は、アイヌの人々がサケを取る権利の回復を求めて中央政府と地方政府に訴訟を提起していると報告を受けました。「水産資源保護法」第28条は、アイヌの人々を含むすべての日本人に対し、ごく一部の例外を除き、内水面でのサケの採捕を禁じています。もっとも、この措置は、歴史的に生活の手段として川でサケを獲ってきたアイヌの人々の先住民としてのサケを獲る伝統的な権利を十分に考慮していません。文化的・儀礼的な目的での捕獲しか認めないこの措置は、アイヌの人々のサケ漁で生計を立てる伝統的な暮らし方を支援できていません。作業部会は、このような状況はアイヌの人々の権利を制限し、代わりに海からサケを捕獲することを許可された企業に利益をもたらすものとなっていることに懸念を示すとともに、政府による同法の再検討を促します。

42 また、再生可能エネルギー分野を含む様々な開発プロジェクトで、アイヌの人々の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」が得られていないことも問題です。作業部会は、こうしたプロジェクトがアイヌの人々と権利に及ぼす悪影響に懸念を抱いています。ステークホルダーは、大型風力発電所の建設や、リゾート開発のために国有林がアイヌの人々の同意なしに企業に貸し出されていることなど、重大な懸念事項を作業部会に指摘しました。再生可能エネルギーの固定価格買取制度やフィード・イン・プレミアム制度の認定を受けるためには、地元住民にプロジェクトの詳細を事前に通知する必要があるものの、これは先住民であるアイヌの人々からFPICを得ることとは異なります。加えて、「アイヌ施策推進法」では、アイヌ文化の振興などを目的とする場合に限って、アイヌの人々に林産物を採取すること認めています。作業部会として、同法がアイヌの人々を国の先住民族として認めていることは確認できたものの、政府がアイヌの人々の森林管理と狩猟に関する集団的権利を認めていないことは遺憾です。

43 作業部会はまた、印刷物やインターネット上で、ヘイトスピーチに分類されるようなアイヌの人々に対する敵対的で歪んだ意見が急増しているという報告も受けました。政府は観光を通じて、アイヌの人々に関する文化的教育を促進するための取り組みを行っていますが、作業部会は、民族共生象徴空間(ウポポイ)でアイヌの労働者がレイシャルハラスメントや心理的ストレスを受けているとの報告を憂慮しています。

44 作業部会が同様に懸念しているのは、雇用主による度重なるヘイトスピーチを含む、在日コリアン・中国人労働者に対する差別の事例です⁠5。被害者が訴えを起こしたヘイトスピーチ関連の事案の中には、日本の司法制度を通じた解決に何年もかかったものもあり、作業部会に寄せられた証言によれば、勝訴しても金銭的補償が受けられず、救済へのアクセスが妨げられているとのことです⁠6。差別やハラスメントを受け続けている在日コリアン労働者の多くは在日三世(またはそれ以上)であり、彼らの母国語は日本語であることも注目に値します。関連して、法務省が2017年に発表した調査によると、職場で差別的な取扱いを受けた人のうち、25%が外国人であることを理由に雇用を拒否され、19.6%が日本人よりも低い賃金を受け取っており、12.8%が日本人よりも劣悪な労働条件のもとで働いていました⁠7

45 加えて、作業部会は、日常生活において未だに様々な差別を受けている、被差別部落出身者を取り巻く人権問題が存在することを知りました。こうした差別は、被差別部落出身者が労働市場にアクセスし、平等な雇用機会を享受する可能性に深刻な影響を与えています。2016年に、日本では「部落差別の解消の推進に関する法律」が成立しているものの、特に、オンラインと出版業界でのヘイトスピーチや職場での差別(例えば、採用選考時の立ち入ったアンケートによるもの)といった差別のパターンが存在することや、差別に対する訴訟で勝訴した被差別部落出身者もいるものの、日本の裁判手続は時間がかかるため、効果的な救済を受けることが困難であるということの報告を受けました。

46 個人情報保護法に基づく要請にも関わらず、個人情報保護委員会は、部落差別に利用されるおそれのある戸籍情報は、同法が対象とする「要配慮個人情報」の範囲には含まれないとの見解を示しました。同様に、2016年に成立した「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律(通称、ヘイトスピーチ解消法)」は、差別の定義や罰則規定、救済措置を含んでいません。更に、同法は合法的に居住する「外国人」のみを対象としているため、部落差別は同法の対象外となっています。もっとも、衆議院内閣委員会において、個人情報保護委員会事務局長が、被差別部落出身であることは、同法の「要配慮個人情報」の規定の中の「社会的身分」の定義に該当することを口頭で認めたことは歓迎すべきことであり⁠8、作業部会は、同法施行のためのガイドラインにこの見解が追加されることを期待しています。

47 作業部会は更に、影響を受けているステークホルダーと協力して、従業員に対する研修プログラムの提供などを通じ、差別の削減に取り組む企業からなる調整委員会など、積極的な実践が行われていることも耳にしました。その他、地方自治体が啓発と差別対策に取り組んでいる例や、法務省の相談窓口の他、厚生労働省が従業員80名以上の企業に対して人権フォーカル・ポイントを設けるよう指示している事例があります。公正採用選考人権啓発推進員制度によると、職員は「同和問題などの人権問題について正しい理解と認識のもとに、公正な採用選考を」確保するよう要求されています⁠9

48 差別を禁止する適切な規制や法律がなければ、被害者が苦情を申し立てたり、救済を受けることが極めて困難であることを作業部会は強調します。先住民族や在日コリアン・中国労働者、被差別部落出身者に対する差別は、日本が加入している「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)」の適用範囲に含まれます。また、ソーシャル・メディア及びテクノロジー企業はそのプラットフォーム全体において人権尊重を促進し、危害を防止する役割を果たすべきであることを繰り返し強調します⁠10

(略)

1 https://www.un.org/esa/socdev/rwss/2016/full-report.pdf 参照。

2 同前。

3 Thomas Piketty, Capital in the Twenty-First Century (Belknap Press, Cambridge, MA)及びJoseph Stiglitz “The price of inequality”, New Perspectives Quarterly , Vol. 30, No. 1

4 https://sdgpulse.unctad.org/inclusive-growth/#Ref_P56NBYW5 参照。

5 例えば、 https://www.bbc.com/news/business-55345080 及び https://www.asahi.com/ajw/articles/14714919 参照。

6 https://www.business-humanrights.org/en/latest-news/japan-lawsuit-against-leading-real-estate-fuji-corp-over-alleged-distribution-of-doc uments-containing-racist-expressions-constituting-hate-speech-company-comments-compensation-orders-unacceptable/ 参照。

7 https://www.moj.go.jp/JINKEN/stophatespeech_chousa.html (日本語)参照。

8 https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php (日 本語)で2023年12月7日へ移動し、内閣委員会のビデオを選択することで録画が視聴可能。

9 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/system.html (日本語)参照。

10 例えば、OTH 125/2022及び関連文書を参照のこと。本報告書で言及されている全ての文書は、 https://spcommreports.ohchr.org/Tmsearch/TMDocuments で入手可能。

抜粋2 結語

83 日本における国連指導原則の実現を促進することは、地域的・世界的にビジネスと人権のアジェンダを推進するリーダーとしての日本の評判を確固たるものにするだけでなく、国内外における日本企業の人権に及ぼす良い影響力と競争力を強化するためにも極めて重要です。作業部会は、能力を構築し、国連指導原則及びNAPの認知を広めるための政府、企業及び市民社会による継続的な努力を評価します。

84 しかし、作業部会は、日本における構造的な人権課題が、ビジネスと人権分野における国や民間セクターの取り組みの一環として十分に対処されていないことを懸念しています。女性、高齢者、子ども、障害者、先住民族、そして、被差別部落出身者、技能実習生、移住労働者、LGBTQI+の人々を含むマイノリティ・グループといったリスクにさらされているグループに対する不平等と差別の構造を完全に解体することが急務です。そのために、包括的で率直なマルチステークホルダーダイアローグを通じて、国連指導原則の実現を加速させる必要性があることは明らかです。

抜粋3 勧告

85 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)及びその他の国連人権メカニズムが公表したこれまでの勧告とガイダンスに加えて、作業部会は政府に対して以下の勧告をします。

日本政府への勧告

85 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)及びその他の国連人権メカニズムが公表したこれまでの勧告とガイダンスに加えて、作業部会は政府に対して以下の勧告をします。

(a)「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)を見直す際、

  1. リスクにさらされているコミュニティが経験しているビジネスに関連した人権侵害に特別な注意を払うこと
  2. 作業部会が過去に示したガイダンスに沿って、救済へのアクセスや企業の説明責任を強化すること⁠1
  3. ビジネスと人権政策のギャップ分析を含めること
  4. 進捗状況を測定・評価するための明確な責任所在、計画実施期間及び人権指標の特定を含めた実施方法を明確化すること
  5. 計画実施中の進捗状況の測定・評価において、被害者や市民社会関係者を含むステークホルダーの有意義な参加を確保するための効果的なメカニズムを構築すること

(b) 国連指導原則及びNAPに関する研修及び啓発活動を継続すること 

(c) 「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」について、

  1. 公的資金で支援されている事業を含め、エンドユース段階でのリスクや影響を明確に対象とすること
  2. 「人権」の定義を深め、環境への影響や国際文書を包含すること
  3. 人権デュー・ディリジェンスの一側面として、環境・気候変動への影響を明示的に考慮すること

(d)関係するステークホルダーと協議のうえ、人権デュー・ディリジェンスを義務付ける国内法を採択すること

(e)特に、企業に対し、司法・非司法的苦情処理メカニズムへの全面的な協力と立証責任の転換を求め、人権基準に関する体系的かつ有意義な報告を要求し、被害者の救済へのアクセスを確保すること

(f)公務員、司法関係者、立法者を含む社会のすべての関係者の間で指導原則に関する認識を高め、ビジネス関連の人権侵害を保護し、調査し、処罰し、救済するそれぞれの義務を果たす能力構築をすること。そのために十分なリソースを確保すること

(g)本報告書で特定された障壁を取り除くことで、司法・非司法的救済へのアクセスを改善し、ビジネスと関連した人権侵害を受けた全ての被害者に対し、以下の内容を含む、効果的な保護と支援を確保すること

  1. 日本司法支援センター(法テラス)の認知度を高めること
  2. 効果的な救済へのアクセスや企業の責任を一層促進するため、人権の促進と保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)に沿って、堅固で独立した国内人権機関を遅滞なく設立すること。この機関は、民事的救済の提供、啓発、ビジネスと人権に関する能力構築及び人権擁護者の保護など、人権侵害に対処するための明確な権限及びリソースを有するべきである。また、他国の国内人権機関やOECD連絡窓口(NCP)との緊密な協力関係を構築すべきである
  3. 救済へのアクセスを容易にするために人権オンブズパーソンを創設すること
  4. 国外の管轄区域で人権を侵害されたステークホルダーに対するNCPの権限及び手続に関する認識を高めることを含め、意義のある救済を実現するために、OECD連絡窓口(NCP)の認知度、制度的能力及び専門性を高めること
  5. 「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」の認知度を高め、日本における外国人労働者コミュニティにおいて信頼を構築するための努力を継続すること
  6. 「公益通報者保護法」の次回の見直しの際に、自営業者、請負業者、サプライヤー、労働者の家族や弁護士への適用、内部通報者に報復する企業への制裁の確立、内部通報者への金銭的インセンティブその他類似の報奨制度の提供などを通じ、内部通報者保護を更に強化すること

(h)「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(1958年、ILO条約第111号)」、「職業上の安全及び健康に関する条約(1981年、ILO条約第155号)」、「強制労働に関する条約(1930年、ILO条約第29号)」の2014年議定書、「原住民及び種族民条約(1989年、ILO条約第169号)」、「すべての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する条約」並びに「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女性差別撤廃条約)」、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)」、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)」、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」及び「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」の選択的議定書を批准すること

(i)民間セクターにおける女性代表の義務的クオータ制の導入を含め、男女間の賃金格差を是正するとともに、指導的地位における女性の平等な登用を促進するために、「同一価値労働同一賃金の原則」を実現するための措置を強化すること

(j)既存の差別禁止法を改正し、その包括性と実効性を高めるとともに、明確かつ包括的な差別の定義を盛り込むことを含め、差別を公的に禁止し、制裁すること。また、国際基準に沿って、企業が就職選考において差別につながる可能性のある質問をすることを禁止し、職場やオンラインにおけるセクシュアル・ハラスメントや暴力に対処する取り組みを強化することを含め、マイノリティに対する標的型差別に対処する取り組むこと

(k)雇用主に対して、障害者に対する個別支援と合理的配慮の尊重と実施に関する包括的な研修を実施すること

(l)障害者の社会への完全なインクルージョン・参加を促進するために、NAPなどの公式文書において、障害者のアクセシビリティを確保すること

(m)国際人権基準に基づく技能実習生研修制度の改正において、斡旋手数料の支払い廃止、技能実習生を雇用する事業所における現場での人権研修の実施の義務化、応募制度の簡素化、転職の柔軟性の向上、安全な労働条件及び適切な生活条件の確保、日本語学習及び職業訓練の機会の提供、日本法で義務付けられる同一価値労働同一賃金の実施など、明確な人権保護制度を盛り込むこと

(n)労働基準監督署などによる臨検調査を強化し、強制労働及び人身売買の被害者の特定を強化すること

(o)「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」の適用範囲を拡大し、出身地や在留資格にかかわらず、職場におけるヘイトスピーチや雇用機会に影響を及ぼす可能性のあるヘイトスピーチなどの問題に取り組むこと

(p)政府機関と民間企業が、先住民族の権利に関する国際連合宣言などの国際基準に従って、先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」の権利を守るようにすること

(q)部落差別に関する調査を実施し、アイヌ民族の現状に関する包括的な調査を定期的に実施し、関連するプログラムや政策をそれに応じて適合させること

(r)差別のない雇用機会への平等なアクセス、適正な賃金、安全な労働条件を保障することを含め、在留資格にかかわらず、全ての労働者に労働法が適用されることに対する認識を高めること

(s)公正な移行(ジャスト・トランジション)に向けた人権への考慮を念頭に置きながら、気候変動への取り組みを強化すること

(t)福島第一原子力発電所事故後の清掃活動に携わった人々の献身的な努力を評価し、多重下請け構造を解消するための措置を講じ、労働者に適切かつ遡及的な補償を確保し、労働者の健康上の懸念を業務上の疾病として認識し、安全な労働条件と正確な被曝記録を確保し、被曝した労働者の継続的な健康診断とケアを保障すること

(u)福島第一原子力発電所から放出された水の処理に関する全ての情報を引き続き公開すること

(v)PFASの暫定目標値が最新の科学的証拠に基づき、環境基準に適合していることを確保すること等により、水供給におけるPFASの存在と人々への影響に対処すること

(w)開発協力大綱及び関連する政府開発援助政策に、国連指導原則、NAP及びガイドラインの明確な言及を組み込むこと

(x)人権デュー・ディリジェンスのために「子どもの権利とビジネス原則」の利用を促進すること

(y)国連指導原則に沿って、責任ある撤退に関するガイダンスを企業に提供すること

1 A/69/263

企業及び業界団体への勧告

86 作業部会は、企業及び業界団体に対し、以下の勧告をします。

(a)国連指導原則に従って、事業レベルの苦情処理メカニズムを確立し、効果的な非司法的苦情処理メカニズムの全ての基準がジェンダーに配慮した形で解釈されるようにすること⁠1

(b)個人及び地域社会に生じた損害に効果的な救済を提供すること

(c)企業の意思決定機関において、女性の登用を増やすこと

(d)公正な移行に向けた人権の考慮を念頭に置きながら、気候変動への取り組みを強化すること

(e)国連指導原則及び「汚染者負担」原則(PPP)のもと求められているように、事業活動に起因する水道水中のPFASの存在に責任を持ち、問題に対処すること

(f)採用選考において差別につながる可能性のある質問を排除し、職場におけるあらゆる差別、搾取、ハラスメント、権利濫用その他の形態の暴力に対処すること

(g)人権デュー・ディリジェンスにおいて、「子どもの権利とビジネス原則」を取り入れること

(h)紛争影響地域やリスクの高いセクターで事業を行う際は、強化された人権デュー・ディリジェンスを実施すること

(i)労働者の結社の自由、団結権、団体交渉権を促進することに加え、国際的に事業を展開する場合を含め、特に弱い立場にある人々との意義のあるステークホルダーダイアローグを強化すること

(j)報復を恐れることなく職場でのセクシャル・ハラスメントを報告できるよう、従業員やタレントに透明で利用しやすいコミュニケーション・チャンネル及び安全な環境を提供すること

1 A/HRC/41/43 参照。

市民社会への勧告


87 作業部会は、市民社会関係者に対し、以下の継続を勧告します。

(a)国連指導原則のもと、国と企業の各々の義務と責任に関する認識を高め、能力構築をすること

(b)特にリスクにさらされた人々や集団に対する人権侵害の事例を記録し、事業レベルの苦情処理メカニズムなど、司法的・非司法的苦情処理メカニズムへのアクセスを容易にするための支援を行うこと

(c)ビジネスと人権に関する現行の法的及び政策的枠組みの強化を目指す取り組みに寄与し、そのような取り組みにおける全てのステークホルダーの参加を促進すること


引用元
国際連合人権理事会 https://docs.un.org/en/A/HRC/56/55/Add.1
ヒューマンライツ・ナウ(日本語仮訳) https://hrn.or.jp/news/25958/
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